2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

第162回芥川賞受賞作 背高泡立草 古川真人

長崎の島に親族が集まって皆で草取りする。途中、戦後にワープしたような話が盛り込まれ、あるいは、時期はハッキリしないが、少年がカヌーでこの島にたどり着き、この島を出ていく話が出てくる。でも結局、草取りの話に戻る。最後の方で除草剤蒔いたら?と…

2021年7月 100分de名著 ボーヴォワール 老い 上野千鶴子

誰しもに訪れ、誰しもが認めない。そんな「老い」の実態を容赦なく暴き出し、「文明のスキャンダル」と捉え直した画期的な一冊。20世紀を代表する知性が老境に入って書き上げた大著を、超高齢化が進む現代社会に引きつけながら読みとく。 サルトルとの自由恋…

平賀源内 江戸の天才アイデアマン 榎本秋

2018年4月初版 2019年10月第2版 本草学、科学、戯作、画家、鉱山師、陶芸家、俳人―多彩な才能にあふれるアイデアマン。土用の丑の日にウナギを食べるという習慣も源内のアイデアだった。エレキテルの代名詞で知られ、江戸のダヴィンチとも呼ばれる平賀源内。…

青い鳥 メーテルリンク作 末松氷海子訳

2004年12月16日 第1刷発行 2010年10月5日 第4刷発行 『青い鳥』は1908年にモスクワ芸術座で初演され評判になった戯曲。原作者モーリス・メーテルリンクはベルギー生まれ。フランス作家ミルボーに「現代のシェークスピア」と激賞される。1911年ノーベル文学賞…

武田信玄 木暮正夫 

1986年6月15日 第1刷発行 2016年 第49刷発行 2017年10月18日新装版第1刷発行 父・信虎を反面教師として、父のように戦だけを好むのではなく、民の生活に潤いを与えようと様々な政策を実行する信玄。金山を開発し、治水工事を行い(信玄堤が有名)、産業を興…

中国共産党帝国とウイグル 橋爪大三郎 中田考

2021年9月22日 第1刷発行 中国共産党は「共産党」と名乗っているが、共産主義ではない。土地は原則国有ではあるけれども、使用権の私的所有を期限70年として認めているから、私的所有を認めているのとほぼ同じ。資本についても株式会社が登場しており私的所…

高木奈那・美帆 ともに頂点へ 林直史

2018年7月 初版第1刷発行 天才少女・スーパー中学生だった妹さんの高木美帆選手。小柄でいつも比較されてきた姉の奈那選手。その奈那選手がパシュートでの金メダルに続いてマススタートでも金メダルに輝き、1大会で2つの金メダルを獲得。『美帆だけじゃな…

家なき子 エクトル・マロ作 波多野未記訳

1994年3月23日第1刷発行 2010年10月6日第14刷発行 1878年の作品。今から150年近くも前の作品です。安達祐実さんの例のセリフが有名ですが、原作って、そういえば読んだことがないなと思い、今回、読んでみました。 冒頭の場面。主人公のレミは、バターとミル…

高梨沙羅 さらなる飛躍 師岡亮子

2018年8月 初版第1刷発行 女子ジャンプがオリンピック種目に加わったのは2014年のソチオリンピックから。それ以前は男子ジャンプのみだったというのは知りませんでした。確かに記憶に鮮明に残っている長野オリンピックでは女子ジャンプは競技種目になかった…

オリエント急行殺人事件 作クリスティ 訳神鳥統夫

2005年11月第1刷 2015年第5刷 アガサクリスティーの推理小説を久しぶりに読む。豪華客車の中で起きた、密室殺人。たまたま名探偵ポワロが乗り合わせ、12名の乗客から聞き取りをすることから事件の真相をあぶりだす。その真相とは?被害者が何者で、乗客と被…

少女ポリアンナ エリナー・ポーター作 谷口由美子訳

2002年12月18日第1刷発行 読んでいて楽しくなる小説。ポリアンナの、どこまでも、前向きな、何にでも喜びを見出そうとする、その姿に、周囲の人が、小難しい人やら、偏屈な人やら、頭の固い人やら、どんどん影響を受けて、皆、ポリアンナのあるゲームに参加…

松下幸之助物語 一代で世界企業を築いた実業家 渡邊祐介

2019年10月2日 第1版第1刷発行 日本人で松下幸之助の名前を知らない人は恐らくいないだろうと思う。松下電器、ナショナル、パナソニックというブランド名とともに、松下幸之助そのものがブランドだと思う。 両親や多くの兄弟姉妹を早くに亡くし、小学校も出…

ガリヴァー旅行記 スウィフト作 中野好夫訳

1951年4月20日第1刷発行 2001年3月16日初版第1刷発行 2011年3月15日初版第9刷発行 リリパット(小人国)渡航記とブロブディンナグ(大人国)渡航記からなる。大人になって初めてガリヴァー旅行記を読んだ。今まで子供向けの話だと思っていたが、実は当時のイ…

国木田独歩 武蔵野/欺かざるの記〔抄〕 監修 佐伯彰一 松本健一

1995年11月25日初版第1刷発行 遅ればせながら、国木田独歩の『武蔵野』を初めて読んだ。北野昭彦さんの解説によると、「武蔵野」は、従来顧みられなかった雑木林の美を描いて、日本文学の自然描写に一新紀元を画したとされていた。なるほど読んでみて、ツル…

アーサー王物語 阿刀田高

1998年9月21日第1刷発行 2005年3月4日第5刷発行 面白い、の一言に尽きる。 筆者のあとがきによると、あまたあるアーサー王物語の中から、幹を取り上げ、血わき肉おどる部分を外さずに書いた、とのこと。山本史郎さんの解説によると、今から1500年前頃の話を…

坂本龍馬 横山充男

2009年11月第1刷 2011年2月 第6刷 小さい頃、泣き虫だったとは知りませんでした。 その後、剣術の腕を磨き、28歳で脱藩して勝海舟の下で航海術を学び、初めての会社、亀山社中を作り(後の海援隊)、更に薩長同盟の立役者、大政奉還のために力を尽くすも、33…

あの歌この街二 橋本克彦

2021年3月18日第1刷発行 1 岸壁の母(昭和29年、47年) 舞鶴市が舞台。モデルは端野いせ(手記「未帰還兵の母」)。当時、引揚船が到着した、呉、唐津、博多、門司、佐世保、別府、下関、宇品、和歌山田辺、神奈川浦賀、横浜、函館などの港には岸壁があった…

小平奈緒 栄光と友情 甲斐毅彦

2018 年 6 月 初版第 1 刷発行 小平選手が平昌オリンピック 500 メートルで優勝した時、日の丸を羽織り、そのタイミングで銀メダルの李相化選手が駆け寄って泣き崩れ、その彼女をしっかり抱きしめた姿を覚えている人は多いと思う。その背後にどんな二人の関…

ロビンソン・クルーソー ダニエル・デフォー作 海保眞夫訳

2004 年 3 月 16 日発行 ルソーの『エミール』に、子どもに最初に読ませたい本として挙げられていた『ロビンソン・クルーソー』。無人島での冒険物語的な内容だったかなということしか覚えていなかったが、読み返してみて、グイグイ引き込まれてしまった。 …

ルソー『エミール』 自分のために生き、みんなのために生きる 西研

2017年8月25日第1刷発行 2021年5月20日第4刷発行 第1編 エミールが0歳からほぼ1歳頃までの、乳幼児期 第2編 口がきけるようになる1歳頃から12歳頃までの、児童期・少年前期 第3編 12歳頃から15歳までの、少年後期 第4編 15歳から20歳までの、思春期・青…

羽生結弦 あくなき挑戦の軌跡 満薗文博

2018年4月 初版第1刷発行 「彼は確かに天才です。ただ、人一倍の努力をする、それができるという意味でも天才です(阿部奈々未コーチ)」 2018年2月17日、ソチオリンピックに続いて平昌オリンピックの連続金メダル。しかも前年に大怪我をしてそれを乗り越え…

クリスマス・キャロル C.ディケンズ 訳/小池滋

1985年12月10日 1991年12月4日第1刷発行 1994年11月10日第2刷発行 主人公スクルージは、冷酷で無慈悲な守銭奴として、人々から忌み嫌われている初老の老人。 無二の親友だったマーレーの亡霊に脅かされる第1章、過去を司る精霊が登場する第2章(スクルージ…

100分de名著 戦争は女の顔をしていない アレクシエーヴィチ 沼野恭子

ソ連従軍女性たちの証言から、過酷な体験とリアルな感情を丹念に拾い上げ、「生きている文学」に昇華させたアレクシエーヴィチの代表作。新しい証言文学の可能性を開いた創作手法と不屈の精神に迫る。 漫画化されたことで話題となり、本書を手にした。2015年…

岡本綺堂 ちくま日本文学 032 1872-1939

2009年2月10日第1刷発行 反七捕物帳より お文の魂 雪達磨 三浦老人昔話より 人参 解説・杉浦日向子(うつくしく、やさしく、おろかなり)によると、半七はシャーロック・ホームズのごとく、日本で一番愛されている探偵だとか。これまで名前は聞いたことがあ…

15歳の寺子屋 乗り越える力 荒川静香

2011年5月16日 第1刷発行 荒川静香さんは努力の人です。この本を読むまでは、特殊な才能に恵まれて、金メダルが取れた人だと思い込んでいたので、勝手な先入観で人を判断するのは怖いですね。 もとより人並み外れた才能があることは、小学3年で3回転ジャンプ…

2018年3月 100分de名著 松本清張スペシャル  点と線、砂の器、昭和史発掘、神々の乱心 原武史

第1回 『点と線』 人間と社会の暗部を見つめて 社会派推理小説の記念碑的作品と呼ばれる「点と線」。香椎潟で男性と女性の死体が発見されるところから始まる。事件のからくりは、汚職事件の口封じに中間管理職の男性一人だけを殺害すると怪しまれるので女性…

第163回芥川賞受賞作 首里の馬 高山羽根子

沖縄を舞台に、資料館で保存作業の仕事をしながら、オンラインで遠方の人とクイズを出す、そんな主人公の家に、ある日、宮古馬が迷い込む。馬が話の半ばになってようやく登場するので、この馬が中心になって、以降、話が進むと思いきや、本州の馬とは違って…

高杉晋作 筑波常治

1999年3月15日初版第1刷発行 長州藩が、吉田松陰の門下により江戸幕府を打ち倒し明治維新の立役者になったことは誰もが知っている。もっとも、その背景には、天下分け目の関ヶ原の戦いで、家康が毛利輝元を甘言で釣って大阪城から一歩も出させず、勝利を収…

15歳の寺子屋 ゴリラは語る 山極寿一

2012年8月30日 第1刷発行 知らない世界って、本当にまだまだたくさんある! ゴリラの研究で山極さんの名前は著名ですが、ゴリラの家にホームステイまでして、フィールド・ワークを実行されていたとは知らなかったです。 ダイアン・フォッシーという女性の博…

第163回芥川受賞作 破局 遠野遥

平成生まれ初の芥川賞作家と宣伝されたように記憶する。文章は確かに読みやすい。ストーリーの展開も「破局」というタイトルのとおり。ただ芥川賞に相応しいかと言われると少々疑問が。若手新人作家のための登竜門であるとは言え、中身があまりにもないので…