核と戦争のリスク 北朝鮮・アメリカ・日本・中国 動乱の世界情勢を読む 藪中三十二 佐藤優

2017年12月30日第1刷発行

 

佐藤 2001年から、それまで外務省が独自に行ってきたキャリアの外交官試験が廃止され、人事院が行う国家公務員試験の総合職に統合されました。しかも、国際法が選択問題になってしまったから、自発的に学んだ人以外、国際法を勉強しないまま外交官になるという事態がすでに起きているんです。国際法を学ばずに来た外交官が今、30代後半。まさに外務省の中堅を支えているわけですよね。

 

佐藤 「戦闘」について「国や国に準ずる組織(国準)の間の争いの一環で人を殺傷または物を破壊する行為」と定義したのも、9条の枠内でという日本独自の考え方からですね。・・機関銃の音が聞こえたから「戦闘行為が起きた」と思ってそのまま書いた。それを上司もチェックできず、上に上がって大騒動になったーそういうことじゃないでしょうか・・要するに基礎体力が弱っていて起きた騒動だったんじゃないかと思うんですよ。

 

佐藤 2016年3月、横畠裕介・内閣法制局長官が、参議院予算委員会で行った答弁が話題になりました。何と言ったか「あらゆる武器の使用は国内法、国際法上の制約があるから、わが国を防衛するための必要最小限のものにとどめるべきだ」と述べたうえで、核使用の使用について「憲法上、禁止されているとは考えていない」と答えたんです。その後、質問主意書が提出され、政府は「憲法9条は一切の核兵器保有および使用をおよそ禁止しているわけではない」と閣議決定しました。

 

佐藤 2018年7月、日米原子力協定の改定になりますけど、世界のNPTに加盟している中で、核非保有国の立場である国において、ウラン濃縮とプルトニウムの抽出を認められている国は一つですからね。日本しかありません。

 

佐藤 非核三原則の「核は持たず、つくらず、持ち込ませず」のうち、「持ち込ませず」を外して2原則にするという考え方がある。さきほどの石破さんたちの考えている方向でしょね。ただし、「持ち込ませず」を外した非核2原則だけではまだ弱いんです。なぜならアメリカは自国の核の配置場所は絶対公表しないために、実質的に抑止力としては今日かされないという主張があるからです。であれば、「持たず」の考え方を半分譲って、アメリカは持ち込めるようにする。要するに「核シェアリング」という考え方によって、アメリカと核を共同運用できるように「持たず」を部分的に緩和する。いわば「非核1・5原則」とする。