兵器を買わされる日本 東京新聞社会部

2019年12月20日 第1刷発行

 

第1章 自衛隊を席巻する米国兵器 ~トランプ大統領の兵器ディール

「兵器ローン」5兆円を突破、から始まり、驚きの連続の事実が書き連ねられていた。

そして読み進めていくと、

これまで攻撃型兵器として研究予算すらつかなった二つのミサイルがある。一つは大気圏内でロケットエンジンを切り離し、軌道を変えて滑空しながら目標を追尾する「高速滑空弾」。2018年度予算で初めて46億円の研究費がつき、2019年度予算は139億円と大幅に増額された。もう一つは2019年度予算でエンジンの研究に58億円が計上された「極超音速ミサイル」。極超音速とは音速の5倍以上の速度域を指す。その速さは現代のミサイル防衛網を突破するとされ、核兵器に代わる次世代兵器と言われる。

これを読んで防衛戦略の大幅な変更が静かに行われていることに衝撃を受けた。

 

第2章 アメリカ絶対優位の兵器取引 ~対外有償軍事援助(FMS)

 salesを「援助」と訳しているおかしさを指摘するところから始まり、FMSで取得する米国製兵器の価格が桁違いで、F35A、オスプレイグローバルホーク、早期警戒機E2D、イージス・アショアの購入費が1兆円を超え、この5種の兵器だけで廃棄までの20~30年間の維持整備費が防衛庁試算で2兆7000億円を超える、というくだりを読んだときにひっくりかえりそうになるくらい驚いた。

 

防衛省でかつて航空機開発を担当した元空将の山崎剛美氏は「二つのミサイルはいずれも攻撃的兵器と見なされる可能性が高いとして、以前は机上の研究にとどまっていた。安全保障環境が急速に変化し、それを敏感に理解したのが安倍首相であり、NSSだと思う」と話した。

 

第3章 降って湧いた導入計画 ~ミサイル防衛のイージス・アショア

イージス・アショアのレーダー選定の流れとしてSSR(ロッキード)とSPY-6(レイセオン)の2種類のうち前者に決まった後で次のような問題提起がなされていることを知り、さらに驚く。

2018年9月、東京・永田町のザ・キャピトルホテル東急・・サイバーテロミサイル防衛をテーマにした定例のセミナーが開かれた・・主催したのは旧防衛庁長官や初代防衛相を歴任した久間章生氏が会長を務める一般社団法人・国際平和戦略研究所・・海上自衛隊OBで、弾道ミサイル防衛の第一人者である坂上芳洋氏が演壇に立った・・「防衛省が選定したSSRは構想段階のもので、作ったためしがない。製造もしていなければ、試験もしていない。にもかかわらず防衛省SSRに(SPY-6より)より高い点数を付けたのはおかしいではないか」と疑問を呈した。

 

第4章 実は火の車の防衛費 ~米国兵器爆買いのツケ

「隠し続けた海底の軟弱地盤」の箇所や、「自民議員に受注業者から献金」の箇所では辺野古移設問題にこんなに根が深い問題があったことを知らされ、またまたショックを受ける。

 

第5章 聖域化する防衛費 ~兵器輸入拡大で禁じ手連発

2019年度予算の概算要求から米軍再編関係費を外した、第2の財布である補正予算で兵器ローン支払いをする、2018年度の補正予算防衛省補正予算は急増する、というやり口は、怒りすら覚える。

 

そして最後の「あとがきにかえて」の中で、

日本医師会の票とカネ、②諫早干拓工事を巡る利権、③今も続く農水省の土木利権、④政界に還流する巨額の医療費、⑤黒いカネを脱色する国民政治協会、⑥道路族と国交省道路局の利権、という「税を追い利権を書く」という、防衛費に限らない利権構造を端的かつコンパクトに指摘し、現在進行形の最大の問題として、役人人事権を握るために2014年に内閣人事局が設立され、これにより人事に弱い役人の性を利用して、官邸こそ最大の利権を生む構造になっている、という現在の日本最大の問題点に迫ろうとする内容、まさしく調査報道の一つの見本のような内容でまとめられてる。

 

久しぶりに読み応えのある新書でした。