ヒト ー異端のサルの1億年 島泰三

2016年8月25日発行

 

表紙の裏

 1億年前、インドとマダガスカルからなるレムリア大陸で霊長類は産声を上げた。2000万年前には東南アジアの失われた大陸スンダランドで類人猿が進化し、アフリカに到達したその仲間からヒトが生まれる。華奢な骨格と裸の皮膚、巨大脳をもつ、異端なサル=現代人は、いつ、どこで生まれたのか。そして日本人の祖先はどこからやってきて、どこに行こうとしているのか。サルから日本人へのはるかな足跡を追う。

 

 第1章 起源はレムリア

 第2章 歌うオラウータン

 第3章 笑うゴリラ

 第4章 類人猿第三世代のチンパンジーとアルディピテクス

 第5章 類人猿第四世代、鮮新世アウストラロピテクス

     アウストラロピテクスはなぜ直立二足歩行をしたのか?また、なぜ、

    これほど極端に厚いエナメル質をかぶせた臼歯を持ったのか?

     石を常時持った初期人類が立ち上がったのは、霊長類としては物理的な必然

    だった。しかも、その骨には肉よりも果実よりもはるかに高い栄養があった。

     アウストラロピテクス属200万年間の繁栄は、この主食によって支えられた

    のである。

第6章 ホモ・エレクトゥスとハンドアックスの謎ーマサイマラから

    200万年前ころにはホモ・エレクトゥス類は類人猿として全世界的な分布をす

   る最初の種となった。

第7章 格闘者ネアンデルタール

第8章 ホモ・サピエンスの起源ーナイヴァシャ湖にて

    ホモ・サピエンスの出現年代は約20万年前。アフリカ起源説は疑いのない事実

    毛皮があったネアンデルタールと裸の類人猿のホモ・サピエンス

    裸の起源は未だ不明

第9章 最後の漁撈採集民、日本人ー宇和海の岸辺にて

    ホモ・サピエンスが「現代人」としてその姿を現すのは、1万8000万年前から

   1万5000年前あたりである。

    土器は煮炊きによって食物を決定的に変えた。

    東アジアこそイヌの起原地。イヌが家畜化された年代は1万5000年前、

   あるいは、1万6000年かそれ以前の時代の長江の南である。

    言葉の起源

    なぜホモ・サピエンスだけがそれを獲得したのか。

    それはイヌを家畜にしたためだと私は考える。

    農耕が始まり、脳は縮む

    ネアンデルタールホモ・サピエンスと比較すると、現代人の脳容量は

   150㏄(10%)も少なくなっている。農耕・牧畜による栄養不足と犬に精神

   活動の一部をゆだねたためではないだろうか?

 終章 ほほえみの力

    日本語は、「朝鮮語」「アイヌ語」などの「古極東アジア語」の層、

   「インドネシア語」「カンボジア語」などの「インドシナ半島語」の層、

   「ナガー語」(ブータンの東、カチン語群をはさんでその東にロロ語群が

    雲南省にある)「ポド語」(ビルマ語群の西、タキ・チン語のさらに西に

    あり、現在のバングラデシュ、インドのアッサムに対応する地域)などの

   「ビルマ系江南語」の層、そして中国語の層の4つの層を持つといわれる。

 

 前半がとても読むのに大変だった。後半は面白くて一気に読めた。人類学の入門書として手に取る人が大勢いるのだろうと思う。こういう研究を続けてこられている方の好奇心には脱帽する。