バチカンの聖と俗 日本大使の一四〇〇日 上野景文

平成23年7月30日発行 帯封「前バチカン大使が語る『カトリック総本山』の体験的文明・文化論 『聖』なる国家の『俗』への挑戦」

 

目次

 序 問題意識 - 文明論としてのバチカン

   第1節 「アニミズム」を語っての15年

   第2節 バチカンに勇んで赴任

   第3節 文明論的にバチカンを語る

   第4節 よく受ける質問

第Ⅰ部 バチカンそのものを語るー6つの視点

  第1章 視点①バチカンの懐深さ

   第1節 バチカンの多相性

   第2節 「主権国家」としてのバチカン

   第3節 「宗教機関」としてのバチカン

  第2章 視点②国際的プレーヤーとしてのバチカン(世俗的側面)

   第1節 首脳レベルの「ローマ法王詣で」後を絶たず

   第2節 法王・バチカンにまつわる5つのパワー

   第3節 存在感は「中国並み」

  第3章 視点③バチカン外交を概観する(世俗的側面)

   第1節 おさらい

   第2節 「外交ビックバン」でグローバルな存在に

   第3節 米国との関係

   第4節 中国、サウジアラビアとの交渉難航

   第5節 バチカン外交の特色ー平和主義、国連重視

   補節  日梵関係概観

  第4章 視点⓸社会経済問題へのアテンション(世俗的側面)

   第1節 カトリックは社会問題に関心が高い

   第2節 法王の「社会ドクトリン」-主要点

   第3節 「社会ドクトリン」を透して見えるもの

   第4節 仏教との共通性

  第5章 視点⑤カトリックって本当に一神教?(宗教的側面)

   第1節 「骨の都」ローマー骨は語る

   第2節 「骨の争奪戦」に見るカトリックの体質

   第3節 カトリックの方が「常識的」?

   第4節 宗教と科学

  第6章 視点⑥「時代の挑戦」を受けるバチカン(宗教的側面)

   第1節 バチカンの将来を左右する「5つの挑戦」

   第2節 各論

第Ⅱ部 バチカンから見える景色を語るー諸宗派、諸宗教との関係

  第7章 「教会離れ」の進む西欧

   第1節 欧州全体には「3つの相」

   第2節 二つの西欧ー西欧における「ミニ文明衝突」

   第3節 「神なき信仰」は一神教

   第4節 ロシア・東欧では宗教は「復権

  第8章 「母なる自然」信仰と動物権運動

   第1節 「動物権」を巡る最前線の動き

   第2節 新思潮の源流

   第3節 バチカンは新思潮に冷ややか

   第4節 二つの懸念

   第5節 反「反捕鯨」論を熟考しよう

  第9章 世界全体では宗教は復権

   第1節 西欧・日本は例外的

   第2節 宗教と外交

  第10章 キリスト教諸宗派との関係

   第1節 第二バチカン公会議が空気を一変

   第2節 正教会との関係

   第3節 英国国教会との関係

   第4節 ユダヤ教会との関係

  第11章 諸宗教との関係ーイスラム教(圏)

   第1節 両宗教関係の複雑性・微妙性

   第2節 3つの視点

第Ⅲ部 日本にとってバチカンとは

  最終章 バチカン体験を踏まえての6つの提言

  あとがき

 

もくじを拾ってみただけでも、とても面白い内容が書いてあると予想された。

読んでみて、期待以上のものがあった。これまでバチカンものは何冊か読んだが、この本が一番分かりやすいし、読み応えがある。以下、備忘録的なメモ。

 

バチカンの発信基地としての顔。バチカン・ローマでスイッチを点灯すると、翌日には全世界でランプが光る仕掛けがある。巨大なシンクタンク、知性主義の塊。

 

組織図が30頁に出ているが「宗教対話庁」があるというのがとても面白い。

仏教との共通性の箇所ではケニアのマータイ女史の「もったいないキャンペーン」「3R運動(reduce、reuse、recycle)」とも木を一にする点こそ、共通の思想と。

宗教の動向をより組織的・体系的に把握する方向で世界各国が整備を図っている。

イランに宗教問題課。ドイツ、フランスでも専門ユニットが設置。アメリカでは国防省に宗教自由局が。各国の宗教自由の実情がモニターされていると。

恐らく日本では文化庁・宗務課が数年に一度世界宗教に関して地域別に報告書を出しているだけで横断的な研究は未だ行われていないのではないだろうか。それと比べると各国の対応はさすがというか。

 

もう少ししたら、再読してみたい本の一冊。