100分de名著 ディスタンクシオン ブルデュー 岸政彦

 表紙に「ハビトゥス、界(シャン)、文化資本ー。数々の強力無比な概念を駆使して、社会の仕組みを解剖してみせた、ブルデューの主著。なぜ階級格差は存続するのか、私はなぜ私なのか。精緻な理論が疾駆する社会学の金字塔を読みとく」とある。

 最初に、この部分を読んだ時、チンプンカンプンでした。またタイトルも、引いてしまうのも事実です。しかし、一読した後に、この部分やタイトルに戻ると、じつは凄い要約であり、タイトルだということが分かります。

 最近読んだ100de名著の中でも、このコンパクトな解説は俊逸な分かりやすさです。

 読んでいて、そこは著者はそういうことがいいたいんじゃないんじゃないかなと勝手な妄想をしながら(なぜなら原文を読んでいないのだから全く勝手な妄想でしかないのですが)読んだ箇所もあります。

 ハビトゥスを、最初、平たくいうと「傾向性」というような意味合いで使っています。その後で、生まれつきのものではなく、社会的に獲得されるもの、と解説しています。そして「合理性」という言葉をもって解説するところが、原著者の意味と解説者の意味とが少し乖離しているんじゃないかという気がしました。

 仏教のカルマ的な要素が、ハビトゥスの意味の中に入っているような直感があります。またクラスターの説明をしている中では、眷属という意味合いが含まれているような気もしました。

 二次元的な図解を示しながら、「象徴闘争」という一見何のこと?と思わせる用語が随所に出てきますが、それをそれでもディスタンクシオン(卓越化・差異化)の動機と呼んで、これがこのままだとやはり何のこと?となってしまいますが、これを柔らかく説明してくれています。

 勝手な感想を書きましたが、100de名著シリーズの中でも、本当にとても原著作を面白く紹介してくれた岸さんに深く感謝します。ありがとうございました。