猿橋勝子 女性科学者の先駆者 清水洋美

2021年3月 初版第1刷発行

 

本の構成とは違いますが、途中で、次のような内容が出てきます。

「地球上にある水は、いったいどれほどの量でしょう。

 全部でおよそ14億立方キロメートルです。そのうちの約97.5%が海水で、約2%が氷河や万年氷、残りの0.5%が川や湖や地下水です。ほかに、全体の0.001%が大気中に水蒸気として存在しています」

 今まで考えたこともない世界の描写だったので、とても新鮮でした。

 

 猿橋さんは当初、中央気象台で研究をはじめ、海洋の炭酸分析を根気よく続ける。

 この時の測定法を微量拡散分析法として論文にまとめ「微量分析の達人」として知られるようになり、このことが後に「死の灰」を巡り合わせることになる。

 昭和29年3月、マーシャル諸島ビキニ環礁で水爆実験が行われ、ビキニ灰分析を依頼されて割り出した炭酸量11.8%との結果から、サンゴが水爆の熱で一瞬のうちに溶けて分解したことを突き止める。

 後にスクリプス海洋研究所のセオドア・フォルサム教授の南カリフォルニアからはじき出したセシウムの測定値と猿橋と三宅康雄が日本近海から測定したセシウム濃度が極端に違っていたため、両者の間で論争が起こり、同じ海水を使ってそれぞれの測定法で分析するという対決が行われることに。結果は猿橋の圧倒的勝利で終わり、共同研究の提案を受け、しばらく一緒に研究することになる。

 60歳になった猿橋は起床研究所を退職し、自然科学の分野で優れた研究をした女性研究者を毎年一人選び、「猿橋賞」を贈ることに。若い女性研究者を育てるために。87歳没。

 

 偉大な先駆者の1人です。特に女性の科学の分野の草分けという意味で、苦労されたことと思います。真面目にコツコツと根気よく研究を続けるという才能自体、多くの女性が持っている大事な美徳の一つのように改めて思いました。