2018年10月20日第1刷発行
「こころ」とは抽象的な概念であり、文脈によってさまざまな意味を表す言葉でもある。本書では、大脳皮質の認知機能、大脳辺縁系による記憶と情動の制御機構、そして報酬系の機能などを論じながら、「こころ」を一つのシステムとみなして考察。
第1章 脳の情報処理システム
大脳皮質は「後づけ」で増築された演算装置。感覚情報をデジタル的に処理し脳内で再構成。特に発達した前頭前野で感覚情報の統合的理解、認知、未来予想などに関与。
第2章 「こころ」と情動
情動とは感情の客観的・科学的評価。「情動体験」(≒感情)と「情動表出」(身体反応)に分けられ、後者を観察することにより客観的に記載できる。情動は脳がつくりだすが、その結果引き起こされた情動表出は脳にフィードバック情報を送り情動を修飾。
第3章 情動をあやつり、表現する脳
情動は大脳辺縁系でつくられる。大脳辺縁系は記憶にも深く関わっており、海馬は陳述記憶の生成に、扁桃体は情動記憶の生成に重要。感覚は大脳皮質と大脳辺縁系で並列処理され、前者は感覚情報物理的側面を、後者は情動的側面を受けもつ。
第4章 情動を見る・測る
情動の高まりは表情を含む行動、交感神経の興奮、副腎皮質ホルモンの上昇に現われる。情動は行動、自律神経系、内分泌系の測定によって観察できる。脳機能画像解析(PET-CTやfMRI)により扁桃体の興奮を測定することも情動を測定する一手段。
第5章 海馬と偏桃体
海馬は新たな陳述記憶の生成に不可欠。陳述記憶は時間がたつにつれて大脳皮質、とくに側頭葉皮質に移行。扁桃体は情動記憶を受けもつ。ストレスホルモンは陳述記憶を弱め、情動記憶を強くする。
第6章 おそるべき報酬系
ドーパミが側坐核に放出されるとその原因になった行動をやめられなくなる。前頭前野は不確実な報酬を大きな報酬ととらえ、ドーパミンの放出を促す。予測した報酬の大きさと実際に得られた報酬の差(報酬予測誤差)が前頭前野が感じる報酬の大きさとなる。
第7章 「こころ」を動かす物質とホルモン
脳内には「こころ」の機能に強く影響をおよぼすたくさんの種類の脳内物質(ノルアドレナリン、ドーパミン、ヒスタミン、セロトニン、アセチルコリン、オキシトシン、バソプレッシン、エンドルフィン、オレキシンなど)が存在する。血液中をめぐる多くのホルモンも脳機能を強く変容させる。
終章 「こころ」とは何か
脳の構造と機能はこれまでより少し知識が深まったように思うが、全てを理解したとは言い難く、頭の中にこの分野の知識が定着したとはまだ言えない。この手の本はこれからも色々読んで学ばないと知識不足、理解不足はまだまだ解消できなさそうだ。