寺田寅彦 ちくま日本文学034 1878-1935

天災と国防(昭和9年11月)

「一国の運命に影響する可能性の豊富な大天災に対する国防策は政府のどこで誰が研究しいかなる施設を準備しているか甚だ心元ない有様である。想うに日本のような特殊な天然の敵を四面に控えた国では、陸軍海軍の外にもう一つ科学的国防の常備軍を設け、日常の研究と訓練によって非常時に備えるのが当然ではないかと思われる。」

今の時代にそのまま当てはまる一文です。

 

いうまでもなく寺田寅彦は物理学者でありながら様々な随想を書いた先駆けの人として有名。団栗(明治38年4月)、竜舌蘭(明治38年6月)、糸車(昭和10年8月)等々。

藤森照信の解説によれば、「記憶の中にある一つの物件に焦点を当て、その周囲のシーンを異常な記憶力で映し出す力は、子規にも漱石にもなかった。過去を写生することにたけたいっぷう変った視覚の人であった」と評している。

そういわれればそうかなという気もするが、今一つ、私には余りピンと来ない。