空気を読む脳 中野信子

2020年2月19日第1刷発行 2020年3月18日第3刷発行

 

帯封に「不安を力に変えるのが日本人の強みだった!大増刷10万部」につられて購入。

 

中脳にあるセロトニントランスポーター(脳内で働くと安心感をもたらすセロトニンの量の調節を、再取り込みというかたちで担うたんぱく質)の密度・量が世界でも一番少ない部類に入るため(量を決める遺伝子にバリエーションがあり、量を少なく産出するSS型という遺伝子型を持つ人の割合が日本に多い)ため、世界でも、最も実直で自己犠牲をいとわない人々ではあるが、いったん怒らせると何をするかわからなくなる、この心理が第二次世界大戦で恐れられた「カミカゼ」を支える心理の裏にはあったと脳科学者的に分析している。更には、この性質が、不公平な仕打ちを受けたり、不正をした相手に対して自らの損失を顧みず義憤に駆られて行動し、最近の不倫バッシングを生み出す要因になっていると、日本人の傾向性を脳科学の分野から分析する。そんなもんかなあ、という漠然とした印象を抱く。

 

それから読んでいて、今まで抱いていた印象とは正反対の分析が載っていた箇所には少々驚きも。曰くスタンフォード大学のターマンのリサーチ(1921年開始、80年調査が続けられ、弟子のフリードマンが研究を完成)によると、長寿者に共通する「性格」は良心的で慎重であり注意深く調子に乗らない、いわばまじめで悲観的な性格を持っていることが長寿との相関が高く、反対に長寿でなかった人に共通するのは陽気で楽観的であるという性格というくだり。楽観的な人の方が長生きするかと思いきや、逆なんですね。確かに考えてみれば何事にも慎重な人の方が気を付けるからそっちの方が長生きするのも当然なのかも、です。