ハムレット ウィリアム・シェイクスピア 原作 小田島雄志 文

2016年9月初版第1刷

 

世界演劇史の中で最も有名な悲劇と言ってよい作品。有名な「To be or not to be.That is the question」は、「生きるべきか死ぬべきか。それが問題だ」という言葉として理解していたが、本書では「このままでいいのか、いけないのか。それが問題だ」と訳されていた。文脈からすれば、復讐を果たすべきか、果たさずにおいた方がよいのか、それが問題だという自問自答をしている場面だから、当然本書のような翻訳の方が内容に相応しい。何故にこのような誤った理解をしていたかといえば、結局、原典(とはいっても英語で読んだわけではないのだが)を読まずして単に知識として頭の中に入れていたからだ。映画になっていたり漫画で読んだりしていたことはあるし、学生時代にも一度読んだことがあったが、改めて読み直してみると、どうしてハムレットに恋心を抱いていたオフィーリアが亡くなってしまったのか、原因が書かれていないので、よくわからない。読者が自殺したと思うのならその想像に任せるという書き方をあえてしているようにも思うが、どうしてそのような書き方をしたのか、今一つよくわからない。

 

いずれにせよ、父の先王が亡霊になってハムレットの前に現れ、弟クローディアスに毒を盛られて殺害され、その妻ガートルードを奪われ、王座まで盗まれるという衝撃の事実を亡霊から告げられると、それが亡霊なのか悪魔なのかを見定めるためにハムレットは役者たちに殺害方法を再現させる演劇を弟に見せ、その反応で弟が殺害したことを確信する場面が白眉。その後、ハムレットは弟とその妻(ハムレットの母でもある)に対し、復讐を果たすために狂人のふりをし、オフィーリアに対しても「愛していた」といったり「愛してはいなかった」といったりして混乱させ、その兄レアティーズは、父がハムレットに殺害され、怨みを抱き、クローディアスと諮ってハムレット殺害計画を立て、毒入りの杯を飲ませるか、毒を仕込んだ剣でハムレットを傷つけようとするが、杯はガートルードが間違って飲んでしまい、ハムレットは決闘で勝利を得るも毒剣で傷つけられ、そのことに気付いたハムレットがレアティーズと剣を交換させてレアティーズに剣を突き立て、最後には毒杯をクローディアスにも仰がせて、皆死んでしまう、という、まさしく悲劇そのものでした。少し付け加えると、ハムレットは決闘に臨む直前、クローディアスにイギリス行きを命じられ、航行途中でイギリス国王宛のハムレット殺害依頼の密書を発見したため、密書を書き替えて同行者殺害依頼とする。海賊船に襲われたことからハムレットは船を乗り移り、同行者はイギリスに行くも書き換えられた密書通りに殺害され、その報告をするためにイギリス使節がクローディアスを訪れるがクローディアスが死んでしまっているので報告のしようもない。これまた、悲劇。