歴史探偵 忘れ残りの記 半藤一利

2021年2月20日

 

半藤さんのエッセイ集。さーっと読める。ことばのウンチクが凄い。

「血と汗と涙」。出所はチャーチルが首相に就任した時に下院での演説(1940年5月10日)。「私は、血と労苦と涙と、そして汗以外に、捧げるべきものは何一つもっていない。…諸君は、政策は何かと尋ねられるであろう。私は答える。海で陸で、また空で、神がわれわれに与え給うたわれわれの全力をあげて、戦うだけである」。汗つながりで「汗牛充棟」。

「ハンケチ」Hand-Kerchiefハンドクェルチーフだから、ハンカチではなく、ハンケチとした方が筋道が通っている。

「欠伸」は当て字ではない。白楽天が使っている。

土用の丑の日」春は木、夏は火、秋は金、冬は水。土が余ったので春夏秋冬の終りの部分を18日ずつ削ってそれを土に用いたので、土用というようになったという中国人の考え方に由来する。

夏目漱石の『吾輩は猫である』のモデルと言われた黒猫は1908年9月13日に死亡したが、朝日新聞が猫の訃報を記事にして報じた。

「埋火」(うずみび)と読む。

井上ひさしさんの文章作法の心得「むずかしいことをやさしく やさしいことをふかく ふかいことをゆかいに ゆかいなことをまじめに 書くこと」

それ以外にも多々あって到底紹介し尽くすことなどできない。今年1月12日に90歳でお亡くなりになった直後に出版された本。もう一冊「歴史探偵 昭和の教え」というエッセイ集第2弾があるようなので、そちらも近々読んでみたい。