テンペスト ウィリアム・シェイクスピア 原作 小田島雄志 文

2016年9月初版第1刷発行

 

47歳頃のシェークスピア最後の作品。「ロマンス劇」と呼ばれている。

テンペスト」は嵐の意味。プロスペローの弟アントーニオは、ナポリ王アロンゾーと手を組み、ミラノ公爵だったプロスペローを罠にはめて、娘ミランダとともに追放してしまう。プロスペローは魔法の力を身につけ、アントーニオやアロンゾーが乗る船がプロスペローのいる島の沖合を通ることを知り、魔法で嵐を起こして船を難破させる。船にはアロンゾーの息子ファーディナンドや弟セバスチャンも同乗していて、アロンゾーと息子は別々に島に辿り着いたため、互いに父は息子が、息子は父が死んでしまったと思い込む。ファーディナンドミランダは一目見た時から恋心を抱き、ファーディナンドはプロスペローの繰り出す試練を乗り越えてミランダを妻に迎える。アロンゾーやセバスチャンはプロスペローと再開を果たし、プロスペローはアロンゾーを許し、魔法の力を捨ててミラノ公爵に戻るとともに、アロンゾーも息子ファーディナンドミランダの結婚を祝福する。プロスペローにはエアリエルという妖精がいて色々と手助けしてくれていたが、最後には解放する。また魔女の息子で醜い化け物キャリバン、酒飲みの料理人ステファノー、道化トリンキュローのドタバタ劇、ゴンザーローという老顧問官といった脇役もキャラが立っている。

解説によると、「われわれ人間は、夢と同じもので織りなされている」とのプロスペローのセリフを通して、シェークスピアは人生のはかなさを十分承知したうえで、だからこそそのはかない人生を生きている限り、精一杯楽しい、美しいものにしようじゃないかと訴えているように思われる、とあった。愛と許しの精神は、その証として捉えている。確かにプロスペローがあっさりとアロンゾーを許しているのはなぜなのかと思ったが、そういう読み方もできなくはない。