仮名手本忠臣蔵  石崎洋司

2017 年 2 月 28 日第 1 刷発行


 忠臣蔵に目をつけた竹田出雲をはじめとする三人の脚本家が舞台を室町時代にタイムスリップさせて人形浄瑠璃としたのが「仮名手本忠臣蔵」。最初の刃傷事件は江戸城でなくて鎌倉の鶴岡八幡宮で起きる。ここに足利直義(尊氏の弟)が兄の代理として神様にお礼するために京都から鎌倉にやってくる。そのもてなし役が塩谷判官高定と桃井若狭之助安近、その指導役が高師直。師直は判官の妻・顔世御前に恋文を送るも、袖にされると激高して判官に嫌味を言い続け、その結果、判官は師直に刀を振り上げて斬りつけ、取り押さえられる。切腹を命じられ、鎧通しの短刀を突き付けるや、筆頭家老の大星由良之助が飛び込み、判官の無念を晴らしてくれと頼まれる。泣く泣く屋敷を明渡し、形見の短刀で師直の仇討を心ある家臣たちは誓い合う。
 その 3 か月後、お軽の父・与市兵衛は 50 両もの大金を手にして山を下って帰る途中、斧定九郎に襲われ斬られて殺されてしまい、50 両を奪われる。お軽の旦那で判官の付き人だった勘平は大事な時に判官の下にいなかったばかりか切腹の時にも居合わせず、猟師となって山でイノシシを追い、イノシシと思って鉄砲を撃ったら、定九郎に命中して殺してしまう。50 両は天の恵みと思い、そのまま家に帰ると、与市兵衛の亡骸が運ばれてくる。お軽はお家のために遊女に身売りし、父がその半金 50 両を持って帰るところだった。お軽は残り 50両を一文字屋が支払うのと引き換えに篭に乗せられる。母は勘平が与市兵衛を殺して 50 両を奪ったと思い込み、勘平は自ら自害する。息が途絶える直前、勘平は事の真相を話し、そこに山で出会い敵討ちを誓った元家臣の 2 人が現れ、100 両を敵討ちのために預かるとともに勘平も血判状に名を連ねて息絶える。
 判官の命日の前日、由良之助は祇園の茶屋で飲めや歌えやの姿で遊び惚ける。油断させるための演技ではないかと疑う斧九太夫から、タコの煮物を出されて本来なら食べてはいけないところ、悟られてはならぬと口にする。そんな中、顔世御前から届いた手紙を読んでいると、遊女のお軽が鏡に映して読み、縁の下に隠れていた九太夫も読んでしまう。どうなることかと思いきや、兄と父がいずれも既に死んでしまっていることを知り、また秘密を知ってしまったからには自害するしかないと、その場にいた兄から刀を奪い取り喉に突きつけようとしたその矢先、由良之助がお軽の覚悟の程を知って止めさせ、赤錆びた刀で九太夫を斬りつける。
 鶴岡八幡宮で判官を押えて師直にトドメを刺すのを防いだ加古川本蔵は結果的に師直を救ってしまい、逆に判官が切腹せねばならなくなったことに責任を感じていた。本蔵には、妻・戸無瀬と娘・小浪がおり、小浪は由良之助の息子・力也の婚約者で、戸無瀬は小浪を山梨の由良之助の隠れ家に連れていく。そこに由良之助の妻・お石と力也がいたが、若き小浪の為を想って、心を鬼にしてお石は小浪に離縁を申し付け、何とか娘を嫁入りさせたいと願う戸無瀬にお石は本蔵の首を差し出せと迫る。そこへ本蔵が現れ、本蔵とお石が対決し、力也も加勢して本蔵の脇腹に槍を突き刺す。とどめを刺そうとした場面で由良之助が登場し、本蔵の本心を見抜き、由良之助は自身の覚悟を告げる中、お石は由良之助と今生の別れを告げ、本蔵は最後の時を迎える。世に名高い「山科閑居」の段。
 堺の商人・天川屋義平は、由良之助に協力して様々調達したが、ある夜それを見せよと取り手の一団が 4 歳の子を人質に取って迫るも、一切本当のことは口にせぬ信義の人。義平は前もって妻を実家に帰すが、その妻が義平の下に戻ってくる。義平は離縁状を書かされ、妻の手に渡るが、その妻は家の近くで大男に髪を切られ懐に忍ばせた離縁状を奪われる。義平に酒をふるまわれた由良之助はお礼に紙を包んだものを義平に渡そうとすると、義平は金と勘違いして受け取りを拒否するも、髪からこぼれたのは妻の髪、櫛と笄、離縁状。自分たちの命は投げ捨てるが、町人の義平とその妻は再び結ばれよとの由良之助の心温まる一幕。そして遂に師直を 46 名で討ち入りし、形見の短刀で由良之助は師直の首を切り落とす。

 歌舞伎で忠臣蔵は見たことないです。今度見てみたいと思います。