若きウェルテルの悩み ゲーテ 斎藤栄治訳

昭和46年7月1日第1刷発行

 

表紙裏に「若き日の生命と感情をすべて吐露し、合理主義や因習からの解放を叫んで、革命的文学運動〈疾風怒濤〉の旗手となった文豪ゲーテの古典的名作。主人公ウェルテルの自己陶酔と絶望、既成社会への反撥と挫折のドラマを通して、青春の哀歓をみずみずしい抒情に造形し、時代精神の予感と憧憬を先取りした不朽の書!」と。

恋の悩みから遂には自殺に至ってしまうウェルテル。当時、恋愛に苦しんで自殺するという小説自体が初の試みだったらしく、一大センセーショナルを引き起こしたらしい。ウェルテル効果というんだとか。

さて、若きウェルテルは舞踏会で法老官の娘ロッテという女性に一目惚れしてしまうが、ロッテにはアルベルトという婚約者がいる。ロッテに盲目的になったウェルテルは彼の地を離れる。新たな土地でウェルテルは官職を努めるが、低い身分であることを嘲笑され傷つき退官する。ロッテのいる地に戻るが、ロッテはアルベルトと結婚して幸せな家庭を築いている。恋に煩悶するウェルテルは自殺を決意し、従者をやってアルベルトのピストルを借り受ける。その際、ロッテが手渡してくれたことを従者から聞き、感激して深夜12時に遺書を書き終わって自殺を遂げる、というお話。

この小説がどうしてここまで古典的名作であるとか不朽の書と言われているのか、まだよく呑み込めていないところがあるが、キリスト教的世界観の中で失恋により自殺するというテーマ設定自体が禁断のテーマに取り組んだ初の小説ということにあるのだろうか?誰にでも失恋の経験は大概あると思うが、死にたくなるような気持ちになるのと本当に死んでしまうのとでは大違い。失恋で本当に死んでしまうというあってはならない世界を小説の中で創出させたゲーテに罪はないのかどうか。ここが一般的にどう評価されているのか少し関心がある。ちなみにゲーテ自身の失恋を題材にしたということらしい。