雨月物語  金原瑞人

2012 年 8 月 10 日第 1 刷発行 2014 年 2 月 28 日第 2 刷発行

江戸時代後期の上田秋成の作品。

1 白峰
崇徳院藤原頼長源為義平忠正たち)が体仁天皇が 16 歳で亡くなったので、次の
天皇は自分の息子だと思っていたのに、弟の後白河天皇天皇になったため、崇徳院後白河天皇との間で起きたのが保元の乱(1156)。崇徳院が詠んだのが「瀬を早み岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞおもふ」。その崇徳院のお墓がある香川県白峰山にお参りして崇徳院の亡霊と出会い、恨みや怒りをぶつけられるというお話。

2 菊花の約(ちぎり)
応仁の乱の後の戦国時代に播磨の国・加古で丈部(はせべ)左門が、病身の出雲の国・
赤穴(あかな)宗衛門を助け、義兄弟の契りを結び、宗衛門は 9 月 9 日(長幼の節句)に戻ると約束して出雲の国に戻る。9 日の夜中になって宗衛門はようやく戻って来るが、監禁されたため自害して幽霊となって戻ってきたというお話。

3 浅茅(あさじ)が宿
間もなく室町時代になる頃、下総の真間に住んでいた勝四郎は、秋には帰ると妻に言い
残して商売のため京都に旅立つ。ところが享徳の乱が起こり戦国時代に突入して関東に帰ることが出来ず、そのまま京都に留まる。妻は戻ってこない夫を待ち続けた。7 年後、ようやく勝四郎は妻の下に帰る。一晩、妻から恨み言を言い続けられる。翌朝、ぼろやで屋根も布団もなく、妻がいないのに気づく。妻の亡霊が語り掛けていたのだった。「さりともと 思ふ心にはかられて世にもけふまでいける命か」

4 夢応の鯉魚(りぎょ)
大津市にある三井寺の興義がある時夢から覚めた際に鯉の絵を描く。ある年、病気にな
り 7 日間寝込んだ後、息をしなくなった。その時、臨死体験をして、琵琶湖の中を魚と一緒に泳いでいたとか。書いた鯉の絵は亡くなった後に湖に蒔いたら鯉が絵から抜け出して泳ぎ回ったとか。ファンタジーの世界のお話でした。

5 仏法僧
江戸時代のお話。伊勢に住む拝志夢然と息子の作之治が旅に出た。高野山に登ると、コ
ノハズクがブッポウソウと鳴いていた。ある時、豊臣秀次の幽霊が出て、歌を詠まされた。「鳥の音も秘密の山の茂みかな」と。秀次が下の句を詠めと家来に言いつけると「芥子たき明すみじか夜の牀(ゆか)」と詠む。二人を阿修羅に連れていけと秀次は家来に命じるが途中で断念して消えていくというお話。

吉備津の釜
農家のせがれ井沢正太郎は放蕩息子で、身を固めれば落ち着くだろうと考えた両親は
吉備津仁社の娘磯良と結婚させようと考えた。結婚する際、吉備津の釜で将来を占うと凶と出たが、そのまま結婚させた。正太郎はしばらくすると放蕩癖が首を擡げ、袖という女を請け出して傍に住まわせる。呆れた両親が正太郎を座敷牢に閉じ込め、磯良は正太郎のためにその後も尽くすが、磯良を裏切って座敷牢を出ると再び袖の下に走る。磯良は恨み骨髄。磯良の呪いのために袖が死に、正太郎にも死相が出る。49 日が過ぎるまで陰陽師のお札で守られる。ようやく最後の夜が明けたと思って外に出ると、まだ夜中。その瞬間、正太郎の姿は影も形も無くなって血だまりだけが残っていた。

7 蛇性の婬
和歌山県新宮市の不良息子豊雄が雨宿り先で知り合った県(あがた)の真奈児(まなご)を訪ねて一晩泊り、金銀散りばめられた太刀を贈られて、翌日帰る。熊野速玉神社の宝物が次々と盗まれる事件が起きていて豊雄が捕まる。事情を話して真奈児の家を訪れるとそこには盗まれた宝物が一杯。再び真奈児と出会い結婚してしまう。翌月吉野に家族で旅をすると、老人が大蛇の妖怪であると見破り、豊雄は新宮に戻り富子と再婚する。ところが真奈児は富子にとりつく。最後は祈祷の得意なお坊さんが真奈児を袈裟に閉じ込めておしまい。

8 青頭巾
快庵禅師がある時栃木県富田まで旅に出かけた際、山の鬼と見間違えられる。聞くと近
くの寺で僧侶が少年と暮らしているうちに少年が死んでしまったが、可愛さの余り僧侶は少年を食い尽くしてしまった。鬼退治に立ち上がった快庵は寺に出かけて鬼となった僧侶に漢詩を授ける。再び寺に出かけると授けた漢詩を詠み続けていた鬼を一喝して鬼は消滅した。

9 貧富論
時は安土桃山時代、処は陸奥の国、お金が大好きな岡左内が、ある時、お金の精霊から、お金を大事する人の所にお金は集まるという話を聞く、というお話。