大鏡 那須田淳

2014年3月10日第1刷発行 2015年2月28日第2刷発行

 

作者は源利房・弟の顕房。藤原道長菅原道真陰陽師安倍晴明等々が登場する。歴史上の人物のエピソードを紹介するのは190歳の大公世継と180歳の夏山繁樹という長寿の老人。

尊仁(たかひと)親王(禎子内親王の子。後の後三条天皇)が主人公となり、藤原道長こと入道と激しく対立する。その藤原道長が栄華を極めるまでのストーリー。

花山天皇が、赤ん坊をお腹に宿したまま藤原氏師が死んでしまったため、傍に仕えていた藤原道兼から一緒に仏門に入ろうと勧められて19歳で出家すると、道兼は父兼家に命じられて帝を裏切る。この真相を突き止めるため、尊仁は俊房とともに陰陽師の力で時空を超えて大鏡を通して物語に入っていく。しかも突然道長も一緒になって。(これは凄まじいファンタジーだ)

最初は菅原道真が左遷されて太宰府に移る直前の場面。道真が藤原時平の陰謀に陥れられたと思い、怨霊となって雷神になった道真をまつるために大宰府天満宮を建てたが、その実、時平は大和魂のある人で道真を陥れたのではないかもと道長は言う。部屋が変わり村上天皇の側室髪長姫が登場。帝が千を超える歌がおさめられている古今和歌集の暗唱テストをするも、いずれもスラスラと答えてしまう。次の部屋は内裏の奥。花山天皇が深夜、道隆・道兼・道長三兄弟を肝試しに引っ張り出す。すると、道隆は幽霊に、道兼は鬼に出くわし、道長も猫に化けて人の言葉を話す尊仁と俊房に出くわしてたいそう驚くが、鏡の仙人の使いの者として猫から話を聞いて世直しを決意する。ここで道長だけが物語から抜けていく。自分の未来を知ることはつまらない、まだ歩いていない新雪の中を歩んでいきたいと述べて。次のふすまをあけると、兼家が亡くなり道隆が跡を継いで関白になったことを面白く思わなかった道兼(花山天皇を引退させた黒幕)は兼家の法事に姿を見せない。次のふすまを開けると、道隆の屋敷の中で道隆の長男伊周(これちか)と競射で争い、道長が勝利宣言をしたうえで完膚なきまでに伊周を負かす。翌年道隆、道兼が次々となくなり、遂に道長が政治の中心に座る。ここで本書は終わる。ただ実際の大鏡はこの続きがあるそうだ。

なかなかの時空を超えたファンタジー。筆者の筆力のせいでもあるのだろうが、とても面白かった。歴史の勉強にもなるので、一石二鳥のお得感がありますね。