語録 人間の権利 日本ユネスコ協会連盟 『語録 人間の権利』翻訳刊行委員会(その3)

昭和四十五年十一月二十八日 第一刷 発行

 

日本人が登場する、後半部分のうち、更にその後半半部分(これで最後)。

 

修道院長はどうあるべきか
人間と言ふものは、上天子より下万人に至るまで、男女の外別種なし。然るを上下に分ち夫々の位階を立、又四民の名目を定しものにして、人なることは同じ人なり。
(五三九)杉田玄白(一七三三―一八一七)『形影夜話』日本

労働を通じて得られた尊厳
米を見て直に米を得んと欲する者は盗賊禽獣に等し。人たる者は須らく米を蒔いて而る後に米を得べし。富を見て直に富を得んと欲する者は盗賊禽獣に等し。人たる者は須らく苦労して而る後に富を得べし。
(五七四)二宮尊徳(一七八七―一八五六)『万物発言集』日本

貧乏について
山上憶良(六六〇―七三三)日本
抑も経済上の平等は本にして政治上の平等は末なり。故に立憲の政治を行ひて政権を公平に分配したりとするも、経済上の不公平にして除去せられざる限りは、人民多数の不幸は依然として存すべし。……然れども記憶せよ、国民の大多数を占むるものは、田畠に鍬鋤を採る小作人、若くは工場に汗血を絞る労働者なることを。
(七二三)安部磯雄社会民主党の宣言』(一九〇一)日本

万人のための学校
今是の華城には、但だ一つの大学のみ有りて閭塾有ること無し。是の故に貧賤の子弟、津を問ふに所無く、遠方の好事往還するに疲多し。今此の一隠を建てて、普く童蒙を済む。
(七四六)空海綜芸種智院式』(八二八年京都に創立)

人間対奴隷制
奴隷に卑屈があれば、主人には傲慢がある。いわば奴隷は消極的に生を毀ち、主人は積極的に生を損ずる。人としての生の拡充を障礙することは、いずれも同一である。
(八五二)大杉栄(一八八五―一九二三)日本

あらゆる人間は解放の状態を望む
うまき物くわまほしく、よききぬきまほしく、よき家にすままほしく、たからえまほしく、人にとうとまれほしく、いのちながからまほしくするは、みなひとの真心なり、然るにこれらをみなよからぬ事にし、ねがわざるをいみじきことにして、すべてほしからず、ねがわぬかおするものの、よにおおかるは、例のうるさきいつわりなり。(八六〇)本居宣長『玉かつま』日本

国民であること
弱小の邦に拠りて、強大の邦と交はる者は、彼れの万分の一にも足らざる有形の腕力を奮ふは、鶏卵を巌石に投ずると一般なり。彼れ文明を以て自ら誇れり。然れば則ち、彼れ固より文明の原質なる理義の心無きの理有らず。然れば則ち我小邦たる者、何ぞ彼れの心に慕ふて未だ履行すること能はざる無形の理義を以て、兵備と為ざる乎。自由を以て軍隊と為し、艦隊と為し、平等を以て堡塞と為し、友愛を以て剣砲と為すときは、天下豈当る者有らん哉。(九三六)中江兆民(一八四七―一九〇一)『三酔人経綸問答』日本