ホメーロスのオデュッセイア物語 バーバラ・レオニ・ピカード 高杉一郎/訳

1972年7月10日第1刷発行 1980年12月10日第7刷発行

 

イーリアスの続編。トロイア戦争勝利後の凱旋途中に10年にも及ぶ漂流物語。

イーリアス以上にギリシアの神々が出てくるが、こちらは完全にファンタジーとして読み進めることが可能なストーリー展開になっている。

第1部 オデュッセウス、故郷のイタケー島にむかう

 ここでは、「1 ひとつ目の巨人プリュペーモス」の目を突き刺して辛くも巨人から逃げるのに成功するが、海神ポセイドーンがオデュッセウス及びその部下に災難をもたらすことになる。「2 魔法使いキルケ―」はオデュッセウスの部下を次々と豚の姿に変えてしまう。「3 ハーデースの国で」は、かつての部下エルベーノールの亡霊が現れて弔って欲しいと懇願する。「4 スキュラとカリュブディス、そして太陽神へ―リオスの家畜」では、セイレーンの歌を上手に聞かずに航海し、トリーナキエ―の島に辿り着き、羊たちを食べてはいけないと言われていたのに、飢餓に負けてしたため、海に出たものの、結局、オーギュギア島に打ち寄せられる。オーギュギア島に住む「5 カリュプソ―」はオデュッセウスを愛するようになり7年もの月日が流れた。オデュッセウスはバイアーケス人の国に泳ぎ着き「6 王女ナウシカア」がオデュッセウスの命を救う。ナウシカアの父「7 アルキノオス王とバイアーケス人」はオデュッセウスをもてなし、筏を作って、遂に故郷のイタケ―島に戻って来る。これにポセイドーンが怒る。

第2部 テーレマコス、父の消息をさぐる

 「8 イタケ―島を訪れた女神アテーナ―」では、オデュッセウスの息子テーレマコスが、母ペーネロペイアが未亡人になったと思い込んでいる多くの求婚者から結婚を求められ、その求婚者らは居ついて父の財産を食い潰している、父が生きているのかどうか調べたいと女神アテーナ―(女神はメンテ―スと名乗る)に相談すると、女神はネスストール王とメネラーオス王に尋ねると良いとアドバイスする。「9 集会」ではテーレマコスがイタケ―島の貴族や指導者を集めてオデュッセウス王の消息を調べるために求婚者が父の館に出入りするのをやめるよう求める。求婚者たちは屁理屈をつけて拒否をする。「10 ネストール王」ではテーレマコスはネストール王から父の消息を聞くが有益な情報に接することはできなかった。「11 メネラーオス王とヘレネ―王妃」と「12 海の老人プロ―テウス」でもテーレマコスはオデュッセウス消息を聞くことはできなかった。「13 テーレマコス、イタケ―島に帰る」では、求婚者らが帰国途中のテーレマコスの殺害を企てるも、テーレマコスは無事イタケ―島に帰還する。

第3部 イタケ―島のオデュッセウス

 「14 豚飼いのエウマイオス」では、イタケ―島に到着したオデュッセウスを女神アテーナ―は老人に変え、エウマイオスはオデュッセウスを気づかずにオデュッセウスの世話をする。「15 オデュッセウス、息子に会う」では、遂にオデュッセウスがテーレマコスと再会し、腐った求婚者たちにいかに復讐するかの計画を練る。「16 ペーネロペイアとその求婚者たち」では、テーレマコスを仕留め損ねた求婚者たちは嘘八百を並べてテーレマコスの殺害計画を否定する。「17 オデュッセウス、家に帰る」で、遂にオデュッセウスが自らの館に乞食の姿をして帰還し、自らを信じる部下とそうでない求婚者たちの下劣さを見極める。「18 オデュッセウス、妻とことばをかわす」では、乞食に扮したオデュッセウスとペーネロペイアは再会するが、オデュッセウスとは思っていなかった。オデュッセウスが得意としていた弓で求婚者らを競わせようと提案する。「19 強弓」では求婚者らは誰一人として弓に弦を張ることすらできない。乞食に扮したオデュッセウスのみが矢を射ることができた。そして館の大広間のドアというドアを全部締め切り、女性を全て部屋から出して、遂に復讐の準備は整う。「20 求婚者たちとの戦い」で、オデュッセウスは矢を求婚者たちに向けて次々を放ち、遂に自らがオデュッセウスであることを名乗り、求婚者たちや彼らの味方となった裏切り者をひとり残らず成敗し、ペーネロペイアにも真実を告げる。なかなかペーネロペイアはオデュッセウスが帰還したことを信じないが、寝台の秘密を説明してようやくオデュッセウスが帰還したことを知り、歓喜に溢れる。「21 父ラーエルテース」でオデュッセウスが父と再会を果たした場面で、この話は終わる。

 乞食に扮したオデュッセウスを求婚者たちは小バカにし、オデュッセウスと知らないまでも心優しい人々は乞食を優しくもてなす対比。またオデュッセウスが帰還し真の姿に戻って求婚者たちをバッサバッサとやっつける辺りは、血沸き肉踊るという小気味よいストーリー展開のため、あっという間に読み進んでしまった。オデュッセウス物語の前半は、なかなかストーリーが進まず、イーリアスの方が面白かったと思っていたが、後半はオデュッセウス物語の方が圧倒的に面白い。こんなに大昔の古典なのに、そしてギリシア神話など全く知らない日本人でもグイグイ引き込まれていくというのに正直大変驚いた。世界の名著に数え上げられるのも良く分かる気がする。