エマソン選集6 代表的人間像 酒本雅之/訳

昭和38年2月5日初版発行 昭和44年2月15日5刷発行

 

人間である限り可能性としては誰でもがすべて偉人なのだと説く本巻は、人間に宿る魂の現れ方をそれぞれに代表する6人の偉人により論じている。

 

第1章 哲学に生きる人 -プラトン

プラトンは、その時代の学問をーすなわちピロラオスやチマイオスやヘラクリトスやパルメニデスなど、ありとあらゆる学問を吸収し、ついで自分の師ソクラテスを吸収した。そしてこれにとどまらず、まだまだ自分はーその当時もそれ以降も例をみないほどーさらに大きな総合に耐えることができると考えて、彼はイタリーに旅し、ピタゴラスからできるかぎりのものを学びとり、ついでエジプトにわたり、そしておそらくは、さらにはるかな東方にまで足をのばして、ヨーロッパに欠けているもうひとつの要素を、ヨーロッパ精神のなかにみちびき入れたのである。このような広範さのゆえにこそ、彼は、哲学の代表者としての地位をしめるにふさわしいのだ。

 

補説 プラトンの新訳にせっして

第2章 神秘に生きる人―スエ―デンボルグ

 

第3章 懐疑に生きる人―モンテーニュ

 モンテーニュの誠実さと活力は、その文章にもあらわれている。これほど、文章くさくない書物は、わたしの知るところではどこにもない。それは、話し言葉がそのまま書物のかたちに移されたものである。それは、切ってみれば血のしたたるような言葉であり、血管をそなえ生命のかよった言葉である。

 

 

第4章 詩歌に生きる人―シェイクスピア

 もしも彼が、もっとつまらない人物で、ベーコンやミルトンやタッソーやセルバンテスなどという、ごくふつうの文豪たちの標準に達しているだけだったら、われわれとしても、あるいはこの事実を、人間の運命という薄闇のなかに葬っておく

 

第5章 世俗に生きる人―ナポレオン

「彼が教えてくれる教訓とは、けっきょく、勇気がつねに教えてくれる教訓と同じものであり、-勇気があれば、道はいつでも拓けるものだという教訓にほかならない。」

 

第6章 文学に生きる人―ゲーテ

「わたしは、ナポレオンとゲーテと同列におく。この二人は、いずれも厳しい現実主義者であり、彼らに教えに従う人たちとともに、この時代のためのみならず、またあらゆる時代のためにも、偽善と虚飾を茂らせる木の根を目がけて、それぞれの斧を打ちおろしだのだ」

 

 訳者は巻末のあとがきで、「偉人は、われわれの眼から、自我中心病を洗い落してくれる洗眼薬だ」を引用する。