クオレ物語 アミーチス作 塚原健三郎編者

昭和39年6月25日第1刷 昭和60年11月30日第30刷

 

小さな愛国者

 イタリア生まれの少年が、ジェノバ行きのフランス船に乗り込み、そこで大人たちからお金を恵んでもらって、食べる物にも困っていたので、たいそう喜んでいたのだが、お金をくれた大人たちがイタリアの悪口を言うのが聞こえてくると、少年は許せなくなり、もらった金を掴んで、大人たちになげつけた、という話。愛国心を強調。

 

少年筆耕

 勉強が良く出来たギュリオが、お父さんの仕事(封書に宛名書きをする仕事)を、深夜、一人起きて、父親の代わりに仕事をしてあげていた。父親も母親もそれに気付かず、父親からは、怠けていると叱られて、泣きたくなる。しかし、その手伝いをやめてしまうと、家計が苦しくなるので、やめられない。遂に体を壊してしまう。しかし、遂にギュリオが深夜に手伝っていることがお父さんにもわかって、お父さんがギュリオに深く詫びる、というお話。

 

ちゃんのかんびょう

 父親が入院したため、急いで病院にかけつけた息子が、見た目も全く変わってしまった“ちゃん”をずっと看病し続ける。ちゃんは口もきけず、わずかに意識のある時にだけ、嬉しそうにする。ところが実は同じ日に入院した別人で、父親は数日したら元気になり、病室にいた息子と一緒に家に帰ろうとする。が、息子は“ちゃん”が可哀想になり、一人残って、ちゃんが亡くなるまで看病を続けた、というお話。心優しい少年。

 

少年 くんしょうをもらうーエンリコの日記

 川で溺れかかった友人を助けるために、川に飛び込んで助けると、大勢から称えられ、勲章をもらう、というお話。勇気ある少年。

 

なんぱ船

 身寄りのないマリオという男の子と、金持ちのおばさんの家で面倒を見てもらうことになったジュリエッタという女の子が、リバプールの港から船に乗ってマルタ島に向かった。

 二人は友達になったが、嵐に巻き込まれ、船が遭難する。救命ボートにあと一人だけ乗れるという状況になった時に、二人のうちまだ若いマリオがジュリエッタに席を譲って、自らは嵐の犠牲となって船とともに沈没してしまった、というお話。自分を犠牲にしてでも他人を救ったという勇気ある少年。若きジェントルマンだと思う。さて、日本だったら、どうだっただろう?