ギリシア神話 アポロドーロスほか 高津春繁・久美子訳

2010年10月14日第1刷発行

 

 巻末の訳者解説には、西洋の文化を知ろうとすれば、ギリシャ神話は「聖書」とならんで欠かすことができない、シェイクスピアの「真夏の夜の夢」の中の寸劇は、本書に収めた「ピュラモスとティスベ」の話が用いられているほか、ドビュッシー、ユージン=オニール、サルトルを始め、数多くの人々がギリシア神話に題材を得て作品を発表している、とある。

 巻末の曽野綾子「人間の素顔にせまるギリシア神話」には、日本の閣僚が外国の代表との会議の席上で当然知っていなければならないようなギリシア神話の物語を知らなかったために一瞬会話から取り残されたという話があることも紹介しつつ、悪を学ぶにはギリシア神話が最高の教材だと思える、絶対的な悪の概念が日本人には明確に存在しないから崇高さもよくわからない、と手厳しい。

 

ギリシアの神々

ティタン神とオリュンポス神との違いを系図で説明している。

ティタン神のガイアとウラノスとの間に、一番下のクロノスとレアの二柱の神さまが誕生する。

 

 オリュンポスの神々

  この二柱から、ヘスティアデメテル、ヘラ、ハデス、ポセイドン、ゼウスの六柱の神さまが誕生。クロノスは次から次へと子を飲み込んだが、母神のレアが一番末っ子のゼウスを隠れて生み落としヤギの乳で育てる。ゼウスは飲み込んだ子供たちを吐き出させて兄弟姉妹で父神とティタン神たちと戦い世界を征服。ゼウスは空、ポセイドンは海、ハデスは死者の国を支配、女の神さまは炉の女神ヘスティア穀物の女神デメテル、結婚の女神ヘラ。という具合に書き綴っていくと、ほとんど全部を書き続けないといけなくなるので、この辺りでお終い。

 

 アポロン

  ゼウスとレトとの子アポロン。音楽と弓の名人。泉の精からパルナソスの山のふもとにあるデルボイに神殿を作り、クレタ人の船長の船に乗って神殿に向かってこの神殿を守る。

 

 デメテルの話

  デメテルの一人娘ペルセポネはゼウスにさらわれ、ハデスの妃にされてしまう。デメテルは娘に会えないことに腹を立て穀物が一切芽を出さないようにする。ゼウスはヘルメスをハデスの下に遣わし、ペルセポネは死者の国のざくろの実を食べさせられたうえでデメテルの下に戻って来る。ざくろの実を食べてしまったので1年の3分の1は死者の国で、残りは天上で暮らすことになる。

 

 プロメテウスの火とパンドラのつぼ

  巨人の神プロメテウスはゼウスが人間に憐みの心を持たないのを快く思わず、火だねを人間に与える。ゼウスはパンドラに決して開けてはならぬと言いつつ小さなつぼを与え、パンドラがつぼを開けると、あやしいかげが立ち上り、急いで蓋をしめて最後に一つ残ったかげを閉じ込めた。ゼウスがつぼに閉じ込めたのは「うたがい」「争い」「にくしみ」「病気」などの災いだった。たった一つ残ったかげは「希望」だった。そんなわけで人間は、どんな災害や不幸に見舞われても希望だけは持つことを許された。

 箱だと思っていましたが、つぼだったのですね。