ギリシア神話 アポロドーロスほか 高津春繁・久美子訳(その3)

2010年10月14日第1刷発行

 

諸国の物語
 ギリシア名アテナのラテン名はミネルバ、アプロディテはビーナス、アレスはマルスギリシア名とラテン名で名まえが違う神さまの一覧が冒頭に掲げられている。

 へびの恩がえしーメラムブスの予言
  ピュロスに住む大勢の召使は、蛇をいじめて殺してしまうが、メラムプスがそのへびの住処にへびの子が沢山いて、ひもじい思いをしていたので毎日餌を運んでやった。すると、メラムプスはいつの間にか動物の声が聞こえるようになり、その声を聞くことで他人が大事していた物を見付けたり、病気を治したり、子が授からる方法を授けたりして、自身も幸せになって行ったというお話。

 太陽の神の戦車を駆る少年パエトン
  太陽の神ヘリオスの息子パエトンは、ヘリオスから人間には太陽の神の戦車を貸すわけにはいかないと諭すも、パエトンはどうしてもその戦車に乗りたがり、やむなくヘリオスは戦車を貸すが、馬が暴れ出してあちこち火の海になり、エチオピア人の肌を真っ黒に焼き、リビアを(サハラ)砂漠にしてしまった。この世の終わりを招きそうだったので、ゼウスが戦車にかみなりを落とし、パエトンの死体は川のほとりに埋葬された。やがてポプラの木となった。

 

 くもになった少女
  アラクネは織物を紡ぐのが得意で遂に増上慢となってしまった。アテネ女神と織りくらべを挑むが、アラクネは神さまの悪いところばかりを麗々しく取り上げた織物を作ったために女神から毒草の汁を吹きかけられ、小さなくもにさせられ、すばらしい指だけ残してもらい、アラクネはおなかから繰り出す糸で見事な模様を織り続けている。

 

 すいせんになった少年
  水のニンフから生まれた男の子ナルキッソスは大層な美少年に成長した。鏡で自分自身の姿を見なければ、しらがの老人になるまで生きていられると予言者に告げられていたが、ある日、鏡で自分の姿を見てしまい、泉のほとりの青草にもたれかかって死んでしまう。ところが死体が見つからず、ひと株のすいせんがあるばり。ナルキッソスとはすいせんのこと。

 

 さわったものが金になるお話
  プリュギア国のミダス王はシレノスからお礼に願いを一つかなえてあげようと言われて私の触るものがすべて金になるようにしてくださいと頼み、世界一の金持ちになれると思いきや、食事も飲み物もすべて金になってしまい、シレノスの主人であるディオニュソスに祈ると、全てが元通りに戻った。

 

 王さまの耳はろばの耳
  アポロンの奏でた曲よりも、牧神パンの音楽の方が優っているという審判を下したミダス王に怒ったアポロンが、ミダスの耳をそぎとってロバの耳につけかえてしまった。

 

 悲しい恋人のお話―ピュラモスとティスベ
  幼な友達の二人は成長し結婚を誓い合ったが親同士がいがみ合い、親の目を盗んで町の外の墓場で会う約束をする。ティスペはベールをくわの木の下に落として洞穴に潜んでいると、血に濡れた顎で獅子がベールをずたずたにし、そこにピュラモスが現れると、ティスペが死んだと勘違いして剣で自らの腹を突き刺し、くわの実を赤むらさきに染めてしまう。洞穴から出て来たティスペは全てを悟り、後を追って死んでいく。この時から白かったくわの実は毎年赤むらさきの実を結ぶようになった。

 

 へびの薬草で生きかえった子どもの話
  クレタ島のミノス大王の王子グラウコスはある日地下室で息絶えて死んでしまっていた。発見したポリュイドスは大王から生きた子を見つけ出せと無茶な命令を下される。が、へびが咥えた薬草を死んだヘビに乗せると生き返ったのを見て、その草でグラウコスの体をこするとグラウコスは生きかえり、ポリュイドスは船に飛び乗り故郷に帰って行った。