人生の教養が身につく名言集 The Inspirrational Qoutes on Windom of Life 出口治明

2016年7月25日第1刷発行

 

名言集に掲載された名言自体、それなりに勉強になるが、著者独自の切り口で表現された言葉は更に興味深かった。

著者は「過ぎてかえらぬ不幸を悔やむのは、さらに不幸を招く近道だ」(ウィリアム・シェイクスピア『オセロ』)を挙げた箇所で、若い頃からの口癖で「『たら』が好きなら魚屋でタラを買ってくればいい。『れば』が好きなら肉屋でレバーを買ってくればいい」と言っていたといい、愚痴もぐっと飲み込んでしまって振り返らないのが一番、という。「明日に持ち越せば1日年をとります。今のあなたが一番若いのですから」と述べて、「何事であれ今すぐにはじめましょう!」と呼びかけている。

また「辛抱強さはよいものだが、それが順風満帆のときであればなおよい」(ニザーム・アルムルク『統治の書』)を挙げた箇所では、順風満帆の時ほど身の丈を意識して謙抑的にならなければならない、科学文明が進めば進むほど謙抑的にならなければならない、と述べている。

さらに「去る者は追わず 来る者は拒まず」(孟子『尽心・下』)の箇所では、「人脈はあくまで結果です。『人脈づくり』等を考えていたら、結局のところ人づき合いは広がっていかないと思います。人脈をあたかも『自分のためのコマ』のように考えている人とは誰もつき合いたくはありません」と述べている。

「世の中のいざこざの因になるのは、奸策や悪意よりも、むしろ誤解や怠慢だね」(ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ『若きウェルテルの悩み』)の箇所では、うっかりのコミュケ不足が人間関係のこじれにつながることが多いという。

「古典を読んでわからなければ、自分をアホだと思いなさい」(高坂正堯)は、古典が難しいと感じるのは、その本が書かれた時代や社会の背景を知らないから。

「私が人生を知ったのは、人と接したからではなく、本と接したからだ」(アナトール・フランス)の項で、著者は高校の頃から週10冊は読んでいたという(それなら今からでも、もしかすればいつかは追いつけるかもしれない、と希望が湧いた。勿論、今のペースではまだ差が開くばかりなので、1日2冊を目標にしたい)。

「ここがロドス島だ。ここで跳べ」(『イソップ物語』)の項では、「人間は、自分のために時間を使ってくれる人に愛着を持つ動物」とある。

最後に「力強いとは、相手を倒すことではない。怒って当然というときに自制できる力を持っていること」(ムハマンド)や「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」(二宮尊徳『二宮翁夜話』)という名言とともに、著者が「カップルガケンカをしたら、星を食べに行け」とフランス人から教わった言葉を挙げておきたい。