検察審査会―日本の刑事司法を変えるか デイビッド・T・ジョンソン 平山真理 福来寛

2022年4月20日 第1刷発行

 

表紙裏「日本の検察審査会は世界でも類を見ない独特な機関だ。11人の市民が、絶大な権力を握るプロの検察官が下した不起訴処分を検証し、事件の再捜査および起訴すべきか否かを決定する。市民の司法参加である裁判員制度とは対照的に認知度は低かったが、強制起訴権限を付与され重要性が増す検察審査会を分析する」

 

著者はハワイ大学教授(社会学) 

 

第1章 検察官と検察審査会

第2章 検察審査会の誕生と運用

第3章 検察審査会の影響

 

第4章 強制起訴

    「この章では、強制起訴制度が実際にどのように機能しているかを検証するため、改正検察審査会法が施行された2009年以降に一般市民が検察官の不起訴処分を覆し強制起訴をするに至った最初の10件に焦点を当てる。最も重要な点は、強制起訴議決が、最初の12年間で10回しか出されなかったことです。・・2010年から2019年までの10年間で、全国の検察審査会は合計56件の起訴相当の決定を下したが、これらのうち9件だけが最終的に起訴強制となった。この間、検察審査会が検察に差し戻した事件(即ち不起訴不当及び起訴相当の決議が出された事件)は1148件で、そのうち179件(16.4%)で検事が不起訴の判断を変更した」

    「強制起訴された事件は・・8件が免訴、公訴棄却または無罪となっている。残りの2件は有罪」

 1 明石花火大会歩道橋事件:警察官1名が起訴強制、公訴時効完成により免訴判決

 2 JR福知山断線事件:元JR西日本幹部3人が強制起訴、全員無罪

 3 沖縄未公開株詐欺被告事件:投資会社社長が強制起訴、無罪判決

 4 陸山会事件:小沢一郎氏が政治資金規正法違反で強制起訴、無罪判決

 5 尖閣諸島中国漁船衝突事件:中国人船長が強制起訴、公訴棄却

6 徳島県石井町長暴行事件:石井町長が起訴強制、科料9000円の有罪判決

 7 ゴルフインストラクター準強姦被告事件:ゴルフインストラクターが強制起訴、無罪

 8 柔道教室学生重傷事件:柔道指導者が強制起訴、有罪判決(禁固1年、執行猶予3年)

 9 東名高速道路あおり運転をめぐる名誉毀損事件:被告人が死亡、公訴棄却

 10 東電福島第一原発事件:東電元幹部3名が強制起訴、一審で無罪(控訴審継続中)

 

第5章 教訓

    強制性交(旧強姦)は起訴しないという問題

    教訓①検察官をチェックすることは可能②検察審査会の起源③正当化がもたらす効果④検審バックの効果⑤影効果と影響⑥起訴強制と有罪判決の少なさ⑦企業犯罪の抑制に向けた課題⑧分かっていないことが多い(透明性がない)⑨市民の満足度⑩検察審査会の危険性⑪民主的な刑事訴追を目指して⑫他国への示唆

    改革のための提言

 

余り理解していなかったので、制度を理解し現状を認識するのには格好の入門書である。