声に出して読みたい日本語 音読テキスト① 平家物語 齋藤隆

2007年8月31日第1刷発行

 

祇園精舎 人の世ははかない定め 奢れる人も久しからず、唯春の夜の夢のごとし。

禿髪   清盛、少年密偵を京に放つ この一門にあらざらむ人は、皆人非人なるべし。

祇王   祇王と仏御前の確執と和解 日比の科は露塵ほども残らず。今は往生うたがひなし。

足摺   孤島に独り残された俊寛 いかにおのおの、俊寛をば遂に捨てはて給ふか。

橋合戦  宇治橋での死闘と宇治川渡河作戦 日ごろは音にも聞きつらむ、いまは目にも見給へ。

入道死去 清盛、高熱に悶死する 悶絶僻地して、遂にあつち死ぞし給ひける。

福原落ち 平家、都落ちし、西海へと船出する 積善の余慶家に尽き、穂悪の余殃身に及ぶ。

宇治川先陣 景季と高綱、宇治川の先陣争い 佐々木四郎高綱、宇治川の先陣ぞや。

木曾最期 義仲と兼平、最後の一戦に挑む 日来はなにともおぼえぬ鎧が、今日は重うなッたるぞや。

逆落   義経ら三千騎、鵯越野坂落とし くは落せ。義経を手本にせよ。

忠度最期 闘将忠度、最期まで歌を忘れず あないとほし、武芸にも歌道にも達者にておはしつる人を。

敦盛最期 熊谷直実、敦盛を泣く泣く斬って出家する あはれ、弓矢とる身ほど口惜しかりけるものはなし。

落足   平家一門、戦場から落ちゆく 浦々島々に漂へば、互に死生も知りがたし。

小宰相身投 小宰相、身重で海に身を投げる 「南無」と唱ふる声共に、海にぞ沈み給ひける。

横笛   滝口入道と横笛の悲恋 人こそ心強くとも、尋ねて恨みむ。

那須与一 与一の強弓、平家の扇を射落とす 与一、鏑を取ッてつがひ、よッぴいてひやうど放つ。

弓流   義経、命を賭して弓を取り戻す 嘲哢せんずるが口惜しければ、命に代へて取るぞかし。

先帝身投 八歳の幼帝、海の藻屑となる 浪の下にも都のさぶらふぞ。

能登殿最期 猛将教経、憤死する いざうれ、さらばおのれら、死途の山の供せよ。

内侍所都入 知盛、平家の最期を見届けて自害する 見るべきほどの事は見つ。いまは自害せん。

大原御幸 建礼門院法皇の見舞いに恥じ入る 御有様を見え参らせむずらん恥づかしさよ。

 

実際に声に出して読んでみた。日本語の硬軟入り混じった美しさは時代を超えて今も生きているということを感じさせてくれた。確かに声に出して読んでみて初めて分かる感覚だというのも頷ける。