ジョン万次郎漂流記 井伏鱒二

1999年11月初版第1刷

 

表紙裏に「少年漁師・万次郎の数奇な運命を描いて直木賞を受賞」。作者は福島出身、40歳で受賞。95歳で亡くなる。昭和12年の作品、この年、盧溝橋事件をきっかけに日中戦争勃発。この時代に自立心を失わず、勇気をもって前向きに運命を切り開いていく万次郎の人間像はある解放感を与えた(巻末の三田村信行の解説)。

 

実在の万次郎(土佐)は、15歳の時に遭難。島でアホウドリを食べながら数カ月生活しアメリカの捕鯨船に助け出される。ホノルルで居を据え、助けてくれた船長に気に入られ、ジョン万という愛称がつけられて、自分の故郷へ連れて行って教育を授ける。その後万次郎は再び捕鯨船に雇い入れられたり、カリフォルニアにわたって金を採り、資金を稼ぐ。そして沖縄、長崎を経由して土佐に帰る。英語を堪能に話せた万次郎は、幕府に通訳として重用され、咸臨丸に乗り込んで日米条約の成立に一役買う。教育者としても活躍。享年72歳。

 

 波乱万丈の人生を送った立志伝中の人。坂本龍馬岩崎弥太郎勝海舟福沢諭吉板垣退助に影響を与えたと言われている。