2012年4月7日初版第1刷発行
表紙裏「『なぜヴィーナスは裸なのか?』『なぜ天使の羽は白いのか?』『頭上に光る輪の描かれた人々は誰なのか?』・・・。名画鑑賞の際にもっともわかりにくいのは、西洋絵画の大半を占める、神話や宗教を描いた作品です。本書は、名画鑑賞に際しての『基本の基本』ともいえる素朴な疑問、知っているようで実は知らない事柄、何を調べたらよいのかわからない事柄に、わかりやすく答える本です。名画に隠された『仕掛け』と『仕組み』を明らかにし、絵画鑑賞をより豊かで楽しいものにしる、『名画の常識』満載!」
はじめに
第1章 なぜヴィーナスは裸なのか? ― 西洋絵画に「裸体画」が多い理由
裸を誇ったヴィーナス ― ボッティチェリ≪ヴィーナスの誕生≫
裸を恥ずかしがったエヴァ ― マザッチョ≪楽園追放≫
裸体をめぐるふたつの立場
人間の身体に対する「肯定的な表現」「否定的な表現」
痛々しいキリストの肉体 ― チマブーエ≪十字架上のキリスト≫
「考え方」の変化が裸体表現を変える!
現世を否定することによって「神の国」に近づくとの考えから、
現世を肯定することによって「神の国」に近づくことができるとの考えへ
「みっともない」裸から「美しい」裸へ
罪深き恥ずべき存在としての人間から、神の美の半径としての人間へ
生き続ける「美の基準」 「コントラポスト」
第2章 なぜ名画は描かれたのか? ― 西洋絵画における教会の役割
名画が生まれた背景 - ボッティチェリ≪春(プリマヴェーラ)≫
実現した「黄金時代」
ヴィーナスを生んだメヂィチの力
目の当たりに見る奇跡 ― マザッチョ≪聖三位一体≫
第3章 なぜ天使の羽は白いのか ― 西洋絵画の「約束事」と「目印」
私たちは天使の姿を知らない ― フラ・アンジェリコ≪受胎告知≫
怪物のような天使の姿 ― ジョットとラファエロ
天使になったキューピット ― ティツィアーノ≪聖母被昇天≫
本来キューピットは恋愛を仲介するいたずら好きの神で天使とは似て非なる存在だったが、キューピットと天使は混同していく。
「約束事」と「目印」の役割 - ファン・エイク≪受胎告知≫
見る聖書 ― レオナルド・ダ・ヴィンチ≪最後の晩餐≫
「目印」は異なっても目的は同じ ― ジョット≪最後の晩餐≫
伝達手段としての絵画
第4章 なぜ頭の上に光る輪があるのか? ― キリスト教絵画の「仕組み」
頭上に光る輪の謎 - ラファエロ≪牧場の聖母≫
ヨセフを探せ! ― ヤンス「イエスの降誕」
聖母マリアの美しさの秘密 - 「聖母被昇天」と「ビエタ」
なぜ神を清めなければならないのか? - 「イエスの洗礼」
なぜ十字架を信仰するのか? ― 「キリストの磔刑」
人気キャラクターの活用 ― 「キリストの復活」
善と悪が分かれる右側と左側 ― ハンス・メムリンク「最後の審判」
「旧い契約」を描いた新しい信仰の表現 ― ミケランジェロ「アダムの創造」
第5章 なぜ愛を伝えるのは難しいのか? ― 寓意画の「仕組み」
ヴィーナスの「目印」 ― ティツィアーノ≪ヴルヴィーノのヴィーナス≫
見えない「愛」の描き方
「寓意」という手法 ― ブロンズィーノ≪愛のアレゴリー≫
約束事がわらない「目印」の謎 ― ブロンズィーノとベリーニ
「あの人」のために描く ― ボッティチェリ≪誹謗≫
左から①真実②悔悟③嫉妬④無実⑤誹謗⑥欺瞞⑦憎悪⑧無知⑨不正⑩猜疑
失われた意味 - ジョルジョーネ≪嵐(ラ・テンペスタ)≫
薔薇の記憶 - フェルメール≪絵画芸術の称賛≫
あとがき
最後にマネの「草上の昼食」が掲載されており、男性の右手人差し指と親指が指し示す「俗なる愛(地上の愛)」の「目印」ともなりうる「蛙」と「聖なる愛(天上の愛)」の「目印」ともなりうる「小鳥」が描かれている。こういう解説を知らなければ絵を見ただけでは気づくことはできない。
そういう意味で、初歩的な名画を鑑賞する際の基礎知識、常識を手軽に学べる一冊です。