光抱く友よ 高樹のぶ子

昭和60年5月25日発行 平成18年1月25日29刷

 

大学教授を父親に持つ引っ込み思案の優等生・相馬涼子。 アル中の母親をかかえ、早熟で、すでに女の倦怠感すら漂わせる不良少女・松尾勝美。 17歳の二人の女子高生の出会いと別れを通して、初めて人生の「闇」に触れた少女の揺れ動く心を清冽に描く芥川受賞作。

 

巻末の荒川洋治の解説は、主人公涼子が同じクラスの女生徒松尾勝美とうわべでつながるのではなく、初恋の人を追い求めるときのような情熱を傾けて彼女との日々を生きる、とし、たいていは恋愛が人間をぬり変えるのだが、この小説では友情によって、友だちが変えるとするところに、作者の文学の姿勢を読み取っている。自分を恋愛の体験以上に強くひっくり返せる生身の友だちがごろごろしていた十代の日々を涼子のような心で生きられなかったことを悔む荒川氏と同じ感想を持つ人はきっと多いに違いない。