西洋絵画の歴史3 近代から現代へと続く問いかけ 高階秀爾監修 三浦篤著

2016年12月6日初版第1刷発行

 

表紙裏「19世紀初めから20世紀末にかけてめまぐるしく変貌した西洋絵画。その複雑多様な流れを主題やテーマ、形式や造形技法などに関わる10の視点から明快に読み解く。ダヴィッド、ドラクロワ、マネ、モネ、ルノワールゴッホセザンヌピカソ、ダリ、カンディンスキーデュシャンポロック、ウォーホルら数多くの巨匠たちの美麗な図版満載。『西洋絵画の歴史』全3巻、ついに完結!総合索引も収載。」

 

はじめに ― 多様化の時代における「西洋絵画」 高階秀爾

第1章 画家、芸術家という存在

        クールベ「画家のアトリエ(私の芸術生活の7年にわたる一時期を定義する現実的な寓意)」が筆頭に挙げられ、集団肖像画「パティニョール街のアトリエ」(マネやルノワール、モネら)や「セザンヌへのオマージュ」の後に、アカデミスムを否定した前衛芸術家としてゴーガン「肖像画レ・ミゼラブル)」、ウォーホル「影」が紹介されている。

 

第2章 近代文明の光と影

    ダヴィッド「ナポレオン1世と皇后ジョセフィーヌ戴冠式」、ゴヤ「1808年5月3日、プリンシペ・ビオの丘での銃殺」、ドラクロア「民衆を導く『自由』」、ターナー「雨、蒸気、速度:グレイト・ウェスタン鉄道」、ドローネー「ブレリオに捧ぐ」、カイユボット「パリの通り、雨」、ベックマン「夜」、ウォーホル「マリリン」、ピカソゲルニカ」、キーファー「鉄の路」が紹介されている。

 

第3章 愛と死

    クリムト「ダナエ」(ゼウスに見初められたアルゴス王の娘)、カバネル「フランチェスカ・ダ・リミニとパウロ・マラテスタの死」(『神曲』地獄篇第五歌)、ルノワールムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」、シャガール「ワイングラスを掲げる2人の肖像」、カサット「眠たい子供を沐浴させる母親」、ピカソ「人生」、マネ「オランピア」、モロー「出現」が紹介。

 

第4章 自然と幻想

    ジェリコーメデューズ号の筏」、フリードリヒ「氷の海」、コンスタブル「干し草車」、ミレ「晩鐘」、ゴッホ「星夜月」(キリストは強い青、天使はレモン・イエロー)、ムンク「叫び」、ルソー「眠るジプシー女」、ダリ「記憶の固執」が紹介。

 

第5章 西洋とその外部

    オリエンタリズム絵画として、トリオゾン「カイロの反抗」、ドラクロア「アルジェの女たち」、ギヨメ「ラグワット、アルジェリアのサハラ」が、ジャポニスムの影響を受けた絵画として、モネ「睡蓮」、ゴッホ「日本趣味、花咲く梅の木(広重による)」、ロートレック「ル・ディヴァン・ジャポネ」が、プリミティヴィスム(原始主義)絵画として、ゴーガン「イナ・オラナ・マリア」、ピカソアヴィニョンの娘たち」が紹介。

 

第6章 平面と色彩

    造形絵画として、アングル「グランドオラリスク」、マティス「ダンスⅡ」、総合主義絵画として、ゴーガン「説教の後の幻影(天使とヤコブの闘い)」、マティス「茄子のある室内」が紹介され、印象派として、モネ「アルジャントゥイユのレガッタ」、スーラ「グランド・ジャット島の日曜日の午後」、ゴッホ「夜のカフェ」が、色彩の場の絵画として、ニューマン「英雄的にして崇高なる人」が紹介されている。

 

第7章 筆触と未完成

    クールベ「鱒」、マネ「テュイルリーの音楽会」、ホイッスラー「黒と金のノクターンー落下する花火」、セザンヌ「首吊りの家」「ローヴから見たサント・ヴィクトワール山」、マティス「ピアノの練習」、フォートリエ「人質」、ポロック「第1番A、1948」が紹介。

 

第8章 抽象絵画と超越性

    ピカソ「マ・ジョリ」、カンデンスキー「コンポジションⅦ」、モンドリアン「黄と青と赤のあるコンポジション」「ブロードウェイ・ブギ・ウギ」、マレーヴィチシュプレマティスムコンポジションー白の上の白(白地の上の白い正方形)」、クレー「大通りと脇道」、ロスコ「No.16赤、白、茶」、クライン「モノクロームIKB65」が紹介。

 

第9章 引用とコラージュ

    アングル「トルコ風呂」、マネ「草上の昼食」、ピカソ「草上の昼食(マネによる)」「ヴァイオリンと果物」、エルンスト「2人の子供が1羽のナイチンゲールに脅かされている」が、メルツ絵画としてシュヴィタース「メルツ絵画25A・星の絵」、コンバインとしてラウンシェンバーグ「モノグラム」が紹介されている。

 

第10章 枠組みを問う作品

     ドガ「ベレッリ家の肖像」、ヴュイヤール「室内(仕事場)」、デュシャン「L.H.O.O.O.」(彼女のお尻は熱い)「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも(通称「大ガラス」)」、リキテンスタイン「た、たぶん(少女の絵)」、ボルタンスキー「シャス高校の祭壇」、ルネ・マグリット「イメージの裏切り(これはパイプではない)」、クルーガー「無題(あなたの眼差しが私の頬を打つ)」が紹介されている。

 

 デュシャンの大ガラスは、正解はないのだろうが、しかし、どうにも、普通の人には、意味が分からないように思う。西洋絵画の根底にある価値観を転倒させようとした(204P)とあるが、この作品をもって、デュシャンは、絵画、美術、芸術は何をもって認識されるのかという問いを投げかけたと考えるのが正確だというが、・・・分からない。