漂流 日本左翼史 理想なき左派の混迷 1972‐2022 池上彰 佐藤優

2022年7月20日第1刷発行

 

帯封「もう左翼は存在感を取り戻せないのか。労働組合の攻防、衰退する社会党国鉄解体の衝撃。左派の未来の可能性を問う。」「歴史は必ず反復する。イデオロギーの時代に踊らされないために『歴史観』が試されている。◇共産党で起きた『新日和見主義事件』 ◇内ゲバ川口大三郎事件』の衝撃 ◇東アジア反日武装戦線と『三菱重工爆破事件』 ◇『日雇い労働者』をオルグする方法 ◇吉本隆明が左翼に与えた影響 ◇労働運動で『貸布団屋』が繁盛した? ◇『郵便番号を書かない』反合理化闘争 ◇『革新自治体』『革新首長』のムーブメント ◇上尾事件と首都圏国電暴動 ◇社会党の弱体化と『江田三郎の追放』 ◇『国鉄民営化』と中曽根康弘の戦略 ◇土井たか子という尊皇家 ◇衰退した社会党、生き残った共産党 ◇メディアが『エリート化』した弊害 ◇新しい左翼と『ヴィーガニズム』『アニマルライツ』 ◇『ウクライナ侵攻以後』の左翼とは」

 

序章 左翼「漂流」のはじまり

第1章 「あさま山荘」以後(1972年~)

第2章 「労働運動」の時代(1970年代①)

    順法闘争 普段の脱法状態を逆手にとって一定期間に限りもともとあるルールを徹底的に守るという闘争(65p) これにより電車にものすごい遅れが生じる

    赤旗の最盛期は1980年、日刊紙と日曜版の合計部数355万部に達する(88p)

第3章 労働運動の退潮と社会党の凋落

    総評(左派社会党系)と同盟(民主党系)は非常に険悪な関係(105p)

    チリで1970年に自由選挙で合法的に社会主義政権が誕生(アジェンデ政権、105p)

    1983年に刊行された浅田彰『構造と力』(勁草書房)がベストセラーになってから、社会主義のような「大きな物語」が終焉した現代では「小さな差異(前身)」こそが大事なのだというこの本のメッセージによって伝統的な左翼思想は労農派も講座派も関係なくすべて無意味なものに一度はなってしまった(114p)

    江田三郎が示したビジョン(アメリカの平均した生活水準の高さ、ソ連の徹底した社会保障、イギリスの議会制民主主義、日本の平和憲法の4つを総合調整して進むときに、大衆と結んだ社会主義が生まれる)117p、は国民的人気があったが、社会主義協会主導で江田三郎を追放したために社会主義協会の説得力は失われ、次第に弱体化し、そのまま社会党の弱体につながっていった(126p)

第4章 「国鉄解体」とソ連崩壊(1979~1992年)

    国鉄民営化を進めた中曽根康弘は日本の左翼勢力を弱体化させ社会主義革命から日本を遠ざけるところに狙いがあった(134p)

    日本共産党社会党の持っていたマーケットのある程度を引き継ぎ、アメリカからの独立を勝ち取ることが彼らの第一段階であると61年綱領で位置づけ、この革命に勝利するには資本家階級も含めた日本人が民族的に団結した方が早道であると考えた(154~5p)

終章 ポスト冷戦時代の左翼(1990年代~2022年)

   ウクライナ戦争勃発後の22年4月、志位委員長が「急迫不正の侵略がされた場合、自衛隊を含めあらゆる手段を用いて国民の命と日本の主権を守る」と発言したが、これはナショナリズムに吞み込まれたのと同じであり、反戦政党ではなくなった(178~9p)