ランボー詩集 堀口大學訳

昭和39年11月15日初版発行 昭和62年9月10日21刷発行

 

あとがきによれば、「1854年シャルルヴィルに生れ、1981年にマルセーユに死す。文学的生涯は15才から22才までの数年間に終わっているが、その後今日まで数代の詩人達が彼を先達と仰いでいる。・・かれにあっては、足は人間の土を踏み、胸は神秘の天上に接し、頭脳は予言の星に触れていた。これは通った道の両側におびただしい未開拓地を残した開拓者であった。この意味で空前絶後の詩人であろう」

 

ある理性に

 散文詩

 ・・君の一歩こそ、新しい人間たちの起床だ。また出発だ。

 

うわごと(その2)

 言葉の錬金術

・・僕は母音の色彩を発明した!―Aは黒、Eは白、Iは赤、Oは青、Uはみどり。―僕は子音の各々の形態と運動を調整した。その上で、本能によるリズムを力に、やがて何時かは万人の感覚に理解される筈の詩の言葉をば発明したと僕は大いに自慢だった。

 

最高の塔の歌

・・もう一度探し出したぞ。

  何を? 永遠を。

  それは、太陽と混った

   海だ。

 

  僕の永遠の魂よ、

  希願は守りつづけよ

  空しい夜と烈火の昼が

  たとい辛くとも。

  

  人間的な願望から、

  人並みのあこがれから、

  魂よ、つまりお前は脱却し、

  そして自由に飛ぶという・・・。

 

  絶対に希望はないぞ、

  希いの筋もゆるされぬ。

  学問と我慢がやっと許して貰えるだけで・・・。

  刑罰だけが確実で。

  

  明日はもうない、

  熱きちしおのやわ肌よ、

    そなたの熱は

    それは義務。

 

  もう一度探し出したぞ。

  何を? 永遠を。

  それは、太陽と混った

   海だ。