戦争の教訓 為政者は間違え、代償は庶民が払う 栗原俊雄

2022年8月4日初版第1刷発行

 

帯封「勝てないと分かっていた『太平洋戦争』を、なぜ日本は始めたのか。 80年前と同じことが今、ウクライナでも起きている。未完の戦争を追い続けるジャーナリストが、今こそ知らせたい戦争の真実 敗戦から今日まで続く屈辱の日露外交を検証する。」「第1章 為政者は間違えるー開戦決定まで 国家の『主権線』と『利益線』 自己中心的歴史観 ロシアと大日本帝国 ロシアのウクライナ侵攻と『核シェアリング』 仮想敵国アメリカに頼っていた石油etc. 第2章 大日本帝国の『終戦構想』 開戦の理由 司馬遼太郎の指摘 希望的観測+空想の『終戦構想』 ロシアのウクライナ侵攻と『成功体験』 昭和天皇の戦争責任etc. 第3章 必然の敗戦 的中とした山本五十六の予言 『天才』石原莞爾が敗戦を予言 自らへの批判を許さない権力者の行き先 国辱的な対ソ交渉etc. 第4章 『聖断』=『英断』? 『大元帥』が把握していなかった軍の実情 開戦2年で勝利の見込みを失った天皇 『決められる政治』は正しいか ロシアに裏切られる歴史etc. 第5章 為政者は間違えるー国民の責任 新聞の戦争責任 ロシアのウクライナ侵攻報道 為政者は後世に審判される 本当の『国民の責任』etc.」

表紙裏「誰でも間違いはする。為政者も間違える。しかも、庶民の想像をはるかに超えたとんでもない間違えをする。そして間違いの影響は、間違った人物の権力の強さ、責任の重さに比例する。為政者の間違いのツケは間違った本人だけでなく、広く長く深く多くの人々に及ぶ。場合によっては永遠に精算されない。そのことを教えるのが戦争の歴史である。 21世紀の私たちは、その教訓を確認しているー(本書「はじめに」より)

 

第1章(為政者は間違えるー開戦決定まで)は、開戦決定という為政者の判断の誤りを具体的な資料に基づいて論証している。

ひと言でいうと「陸海軍とも自らのメンツや見通しの甘さから『避戦』を決断できず、せいぜい海軍が首相に判断を一任するだけだった。その一任はシビリアン・コントロールが作用する最後の機会であったが、政治(東条)はその機能を果たさなかった。そして破滅への道=開戦を選んでしまった」というもの。

第2章(大日本国帝国の「終戦構想」)は、『昭和天皇実録』(61冊の大長編)に基づき考察している。が、1941年11月15日に決定された「腹案」(筆者が教訓の象徴と考えているもの)が抜け落ちているため、なぜ勝ち目のない戦争を始めたのかについては明確な答えが見いだせないと分析する。

第3章(必然の敗戦)は、首相と陸相参謀総長まで兼任した東条英機プーチンを対比したり、日産ゴーン氏やみずほのシステム障害など、権力者の末路や巨大企業の縄張り意識を教訓にせよという趣旨のことが論述されているほか、敗戦が時間の問題になってゐながら戦争継続とともに外交を進めるよう指示した天皇の問題にも切り込んでいる。

第4章(「聖断」=「英断」?)は、『昭和天皇独白録』に基づき、開戦2年足らず、サイパン島陥落の1年近く前の時点で「勝てない」と覚悟していたのが事実ならば、どうしてその時点で終戦、講和に動かなかったのかという疑問を提起し、一撃講和論にこだわったからではないかという仮説を立てている。

第5章(為政者は間違えるー国民の責任)は、戦争被害受忍論に警鐘を鳴らす。