名画はおしゃべり 「酔っ払いから王侯貴族まで」 木村泰司

2020年10月20日初版発行

 

帯封「気鋭の美術史家が軽妙酒脱に語る 1日1話、2週間で世界のビジネスエリートの教養を楽しみながら身につける “目からうろこの絵画の正しい見方”」「絵は口ほどに物を言う! 名画は“見る”のではない、“読む”のだ ◇デューラーブリューゲルルーベンス◇ハルス◇ヴァン・ダイク◇ヨルダーンス◇レンブラントフェルメールフラゴナール◇モネ◇ゴーギャンムンク

表紙裏「勝手気ままに自分の『感性』だけを頼りに絵画を鑑賞するのは恐ろしいこと。時代背景や作者の人生、作品が持つメッセージ…1枚の絵に秘められた『物語』を知ることで、絵画の世界が無限に広がるでしょう。デューラーレンブラント、モネ、ゴーギャンムンク古今東西の名画を『読み解いていく』ことで、時空を超えた美の回廊へとあなたを誘います。漫然と眺めるだけだった絵画たちは、あなたに何を語りかけるでしょう?さあ、名画たちのおしゃべりに耳を澄ませてみてください。」

 

第1話 芸術家も大変! アルブレヒト・デューラー『自画像』

    画家の社会的地位が職人から芸術家と昇格したのはルネサンス期のイタリア。ドイツからイタリアに移って自画像を何枚も書いた最初の画家デューラーデューラーの死後、フランスでも画家たちが社会的地位の向上を図って王立絵画彫刻アカデミーを創設し、アカデミー会員がフランス美術界を支配し続けると、これに反旗を翻そうと印象派が登場。

    日本は職人と芸術家、工芸品と美術品の境界が曖昧で、欧米とは大きく異なる。

第2話 魂の救済 ピーテル・ブリューゲル(父)『死の勝利』

    グレイド・レーニ『聖セバスティアヌス』はラファエロの精神を引き継ぎ、理想美を完成。コロナウイルス騒動で聖セバスティアヌス人気が再び高まるのでは?と語る。

第3話 真面目が肝心 ピーテル・パウルルーベンススイカズラの木陰のルーベンスとイザベラ・ブラント』

    バロック絵画の王と呼ばれるルーベンスはイタリア留学でローマの芸術運動を吸収した後、故郷に戻るとハプスブルグ家のネーデルラント総督の宮廷画家任命され、花嫁ブラントと結婚し、その記念で描かれた肖像画は等身大に近い全身肖像画でまるで貴族のよう。外交官としても活躍する。

第4話 ハルスに乾杯! フランス・ハンス『陽気な酒飲み』

    当時のオランダ風俗画はプロテスタント的倫理観がこめられていて、飲酒に対する戒めとして描かれている。

第5話 家族の肖像 アンソニー・ヴァン・ダイク『第7代ダービー伯爵 ジェームズ夫妻と子供』

    イングランドから宮廷画家として招かれたダイクは王妃の女官と結婚し自らの地位を固めた。さり気なく控えめなエレガンスのある画風が英国貴族に好まれた。

第6話 酔っ払いの戒め ヤーコプ・ヨルダーンス

    ルーベンス、ヴァン・ダイクと並んでフランドル三大画家巨匠のひとり、ヨルダーンスも、飲酒の戒めとして描いている。

第7話 割り勘は時空を超えて レンブラント・ハルメンス・ファン・レイン『夜警』

    集団肖像画でスターダムにのし上がったレンブラントだったが、「夜警」をきっかけに同じ金額を受取っていながら目立たない人が大勢いたために破滅の道を突っ走っていったという神話が生まれた。

第8話 地図で脳内トリップ ヨハネス・フェルメール『士官と笑う女』

第9話 虚飾の肖像 レンブラント・ハルメンス・ファン・レイン『フレデリック・リヘルの騎馬像』

    いち早く美術市場が発達したオランダで台所事情が厳しいレンブラントは裕福な商人の騎馬像を描くが、このころ既に破産し全ての財産を失っていた。

第10話 恋愛の品格 ジャン・オレノ・フレゴナール『ぶらんこ』

     ぶらんこに乗っている描写は性行為を暗示し、スカートの中をのぞき込んでいる若い男の左腕は彼が性的に興奮していることを表している。ロココ絵画は堕落したフランス貴族を象徴するものとして急速に衰退していった。

第11話 印象派人気の謎 クロード・モネ『睡蓮』

     印象派が好きならば、19世紀フランス文学(バルザックやゾラなど)を読むことを勧める、印象派の画家たちが描き出した世界の背景が理解でき、彼らが紡ぎ出した美の世界に深く入り込める、その結果、印象派絵画の持つ魅力がより深く理解できる。日本人の印象派好きは風土の中で培われたDNAのせいではないか、とも。

第12話 ボヘミアン狂騒曲 ポール・ゴーギャン『イア・オラナ・マリア』

     自らをボヘミアン的な芸術家としてセルフ・プロデュースしたゴーギャンこそ、現代の変人タイプの画家第一号であり、原型となった。

第13話 夕方の憂鬱 エドヴァルド・ムンク『叫び』

逢魔時という字からムンク「叫び」を思い起こし、夕方特有の不安感は日本特有のものでないことを改めて知った。

第14話 西洋絵画に描かれた猫

     エジプトでは大変尊重されていた猫だが、キリスト教の時代になると魔女の仲間と言われるようになり、プロテスタント文化圏では肉欲への戒めを諭す絵画の名脇役となる。