昭和38年6月15日初版発行 昭和62年2月25日20版発行
1844年フランス生まれのポール・ヴェルレーヌは、解説によると「意志の弱い人間」「誘惑にとびついて行く質の人間」で、「愛妻も愛児も捨て、遠く海峡のあなた、イギリスへ出奔、放浪生活を続け、一年以上の長きに渡り、全く家庭をかえりみないという放埓ぶり」だが、「その作る詩の個性的で、調べの美しいことは、他に例類がない」「彼にとって詩は、真実であること、自分自身であること、すべてを告白して隠さないこと」「全部がその生活の実感から生まれて来ています」、「もしも詩の目的が、言葉を通じて心の感動を伝えることにあるのなら、何人もわがポール・ヴェルレーヌほどの詩人であった人間は、今日までに、まだひとりも存在しませんでした」。
詩集『やさしい歌』より
17 (そうしましょうね?)
そうしましょうね? 愚者や意地悪い人たちが、私たちの幸せを妬んだり、
そねんだりするでしょうが、
私たちは出来るだけ高きにあって、常に寛容でありましょうね。
・・
一番強い一番嬉しい絆に結ばれている上に
金剛鋼の鎧を着ているのですから
私たちはすべてを追いのけ怖いものとて知らないでしょう。
運命が行末私たちの為め何いを用意しているか
なぞは考えずに、歩調を合わせて歩きましょう、
手に手をとって、混じりっけのない気持で愛し合う
人だけが持つ無邪気な心で、そうしましょうね?
詩集『昔と今』より
詩法
シャルル・モーリスに与う
・・
君が詩句に翼あらしめ
魂の奥所より出で、別の空、別の愛へと
天翔ける歌たらしめよ。
・・