オイディプス王 ソポクレス 河合祥一郎訳

2017年9月20日初版第1刷発行

 

裏表紙「危機に瀕する都市国家テーバイを救うためオイディプス王は神託を請う。結果は、『先王ライオス殺害の犯人を罰せよ』だった。真相が明らかになるにつれ、みずからの出生の秘密を知ることになる彼を待ち受けていた運命とは? 後世の文学、思想に大きな影響を与えたギリシャ悲劇の最高傑作。」

 

巻末の訳者解説によると、古代ギリシャ三大詩人の一人ソポクレス(アイスキュロスエウリピデス)は演劇祭に30回参加して18回優勝。オイディプスはドイツ語ではエディプスと発音。演劇の原点といわれるギリシャ悲劇の代表作である。

 

帯封「『母と交わり、実の父親を殺す』という呪いから逃れ、故国を捨てたオイディプス。英雄として迎えられたテーバイ国で彼を待っていたのは、より過酷な運命だった。『エディプス・コンプレックス』のもとになり、全世界で読み継がれ、上演されつづけるギリシャ悲劇の最高傑作!」

 

“好かれと思って突き進んでみたら、とんだ悲劇を見舞われてしまった!”“知らなければよかった、本当のことなんて!”というため息が聞こえてきそうです。昔も今も人間というのは何も変わっていないのかもしれません。だからこそ古代ギリシャの悲劇が今も読み継がれているのだろうと思います。

話の幹自体は誰もが知っている話です。ただギリシャ神話を読み直し色々な知識を蓄えた上で読み直してみるとより一層面白さが倍増しました。

オイディプスコリントスの王ポリュボスと母メロぺの間に誕生した王子として育てられた。ところがある日本当は王の子ではないと罵られ、神託を授かりに行くと“母と交わい、実の父を殺すだろう”と言われ、このような神託が成就することがないよう旅に出た。3つの道が一つになる街道に差し掛かった時、先払い役と老人に出会い、殺してしまう。

オイディプスはテーバイ国の住民を苦しめていたスフィンクスの謎を解いてテーバイの住民を救い、その功績でテーバイの王ライオスの跡を継ぐ王に迎えられ、先王の妃イオカステを自らの妃とした。国は繁栄したがやがて疫病と飢饉により嘆きの声がこだましたため、妃の弟クレオンが神託を求めると、疫病等は先王殺害の穢れのためであり殺害者を捕えてテーバイから追放せよという神託を得た。盲目の預言者テイレシアスはオイディプスに、疫病等の原因はオイディプスにあると告げ、これに激怒したオイディプスはテイレシアスを遣わしたクレオンをなじる。二人が罵り合うところにイオカステが登場する。イオカステは預言など当てにならないとオイディプスに言おうとして、自分も以前子が産まれればその子がライオスを殺すという予言を受けたが、子に殺される前にライオスは三差路で何者かに殺されてしまい、予言は当たらなかったと話した。ところがオイディプスはこの話を聞いて返って不安になる。三差路でかつて老人を殺したことがあるからだ。ライオス殺害の報を伝えた使者を呼び寄せ、更に二人目の使者を呼び寄せると、オイディプスを捨てるよう妃から命じられたが捨てるに忍びなかった羊飼いが、オイディプスに事の真相を打ち明けよと命じられて全てが明らかに。イオカステは自殺し、オイディプスはイオカステの遺体を目にした途端、自らの目を刺す。途中で度々入るコロス(合唱隊)の歌は韻が踏まれているらしくアリストテレスが高く評価するとおり、その内容は迫力に満ちている。