友情・愛と死 他一編 武者小路実篤

昭和40年7月1日初版発行 昭和52年第55刷発行

 

愛と死

 作家の村岡は友人の野々村の家で妹夏子と知り合う。野々村の誕生会で余興の番が回ってきた村岡に代わって夏子が宙返りを実演してくれたおかげで窮地を脱する。ある日、村岡は余興のできる人がいると友人に話して夏子に手紙で依頼する。夏子は再び宙返りと歌を披歴して場を盛り上げる。いつしか村岡は夏子に恋心を抱き、そんな村岡に夏子も好意を寄せる。距離が次第に近づく中、村岡にパリ留学の話が起きる。夏子と離れるので気が進まなかったが半年限りと期限を切ってパリに行くことを決める。夏子にも半年限りと伝え、結婚を約束する。兄や母にも結婚の許可をもらい、日本を旅立つ。パリ到着後も親しく二人は手紙のやり取りを続け、夏子は琴や料理を稽古し、そのことを手紙で伝える。半年が過ぎ、再会の日が近づいた。あと数日で帰国する村岡の下に夏子が流行り病で死んだという電報が届く。落ち込む村岡は運命を嘆きつつ帰国する。兄や母、野々村から暖かく迎えられた村岡は夏子の墓にお参りをし遺品を手にする。どれだけ再会を心待ちにしていたであろうか。

 夏子の突然の死は悲しすぎます。予兆のない全くの突然死。時代からすると、スペイン風邪だったようですが、今でいうと、コロナウイルスで急に重篤化して亡くなってしまったということですよね。今でも同じような悲しい方々が日本あるいは世界のどこかにいるのかもしれません。一日も早い収束を願うばかりです。