ブラック・スクリーム(上)ジェフリー・ディーヴァー 池田真紀子訳

2021年11月10日第1刷発行

 

帯封「名探偵タイムvs.『作曲家』(コンポーザ―) リンカーン・ライム・シリーズ第13弾は『音』をめぐる戦い!」「内なる『漆黒の絶叫』(ブラック・スクリーム)に魅入られる猟奇犯(サイコパス) 誘拐事件発生直後、グロテスクな動画がアップされた。被害者が目隠しをされ、首吊り縄で首を吊られ、背景に流れる音楽は、『美しく青きドナウ』。うぐ・2・3、うぐ・2・3― ワルツの各小節の第一拍には、なんと人間のあえぎ声が使われていた!」

裏表紙「NYの路上で男性が拉致された。ほどなく、監禁された姿が動画サイトにアップされる。被害者の苦痛のうめきをサンプリングした音楽とともに-。アップロードした主は自称『作曲家』(コンポーザー)。科学捜査の天才リンカーン・ライムはすぐさま監禁場所を割り出す。しかし犯人はイタリアへ逃亡。ライムたちも後を追って、ナポリへ向かう。」

 

原題は「The Burial Hour」そのまま直訳すると埋葬の時間となりそうだ。それをブラック・スクリーム(漆黒の絶叫)と改題されている。和訳するのは難しい。

第1犯行現場のニューヨークから、次の現場はイタリアに。ライムとアメリアは新婚旅行予定先のグリーンランドでなく急遽イタリアに飛ぶことに。イタリアの切れ者検事ダンテ・スピロと、森林警備隊巡査のエルコレの二人がとてもいい味を出している。それに国家警察ナポリ本部のロッシ警部にその下で働くベアトリーチェ科学捜査官。途中で本筋とは違う強姦事件の捜査にライムとアメリアから頼まれて無理やり付き合わされるエルコレが検事に隠れて協力する。上巻でどうしてこの事件が唐突に割り込んでくるのか不明だが下巻できっと種明かしされることだろう。イタリアでも同様にコンポーザーによる犯行が繰り返され不気味な動画がアップされるが、上巻の最後にはコンポーザーが被害者の喉元を切り裂いて死なせてしまう。最後の事件だけ犯行の手口が違うのも今後の伏線のようだ。いつものテンポのよさはいまだ健在。下巻も引き続き楽しませてもらえそうだ。

ちなみに登場人物がダンテやペアトリーチェ等が登場するのは舞台がイタリアで『神曲』を意識してのことなのだろうが、『神曲』と本作との関連性はどこにあるのかもちょっとした興味の対象になっている。