Google・Amazonがインフラをのみ込む日 通信地政学2030 堀越功

2022年12月5日第1版第1刷発行

 

帯封「NTTは日本の空洞化危機を防げるか 通信150年目の岐路」

目次

序章 巨大IT企業が通信をのみ込む

第1章 海底の主役交代-巨大IT企業vs通信事業者

第2章 クラウドの侵食-巨大IT企業vs通信機器大手

第3章 ネットの亀裂-民主主義国vs覇権主義

第4章 2つの5G-米国vs中国

第5章 「ゲームチェンジ」で挑む-巨大IT企業vsNTT

第6章 データを巡る闘い-巨大IT企業vs欧州

第7章 グローバルインターネットの終焉

 

・2010年の段階では、GAFAなどのコンテンツ事業者が占めるデータ量は全体の1割以下にとどまっていたが、2020年の海底ケーブルを通るデータ量はGAFAをはじめとしたコンテンツ事業者による利用が全体の7割を占める。GAFAの中でも特にグーグルとメタの需要が大きい。海底ケーブルはもはや巨大IT企業の専用網と化しつつある。海外ケーブルの製造・敷設で世界三強の一角を占めるNECの子会社OCCはもともと古河電気興業、住友電気工業フジクラが母体となって設立、ファーウェイが買収を申し出たという噂もあったが最終的にNEC傘下に入った。

・通信インフラ市場はファーウェイ、エリクソンノキアの大手3社が世界シェアの6,7割を占めたが、アマゾン、マイクロソフト、グーグルが提供するメガクラウドサービスがクラウドサービス市場の6割を占めるようになると、これらは通信分野でも欠かせないインフラになりつつあり、通信大手機器のシェアを侵食しつつある。

・ロシアによるウクライナ侵攻はスプリンターネットの動きに拍車をかけている一方、ファーウェイが中心となって提案する「NEW IP」は従来のIPとの互換性はなく有害との批判が相次ぐ中で棚上げ状態になったが、名称をFVCNに変更してIPv6+と称して新興国中心に提案を進めている。

・ファーウェイは2009年にはノキアを売上高で抜き、2015年にはエリクソンを抜いて通信事業者向け設備市場で世界トップに躍り出た。5G特許を最も多く持つのがファーウェイ。スマホ分野でも2020年4月~6月でサムスン電子を抜き世界首位に立つ。米政府は半導体供給網を使ってファーウェイを締め上げる作戦に出たことでオープンRAN導入に動き出した。日本はNTTと楽天モバイルがオープンRAN仕様に基づいた基地局を展開しており千載一遇のチャンスに直面している。

・NTTのIWON構想は、電子技術と光技術を融合させ、6G時代のコンピューテイング基盤から通信に至るまで活用していこうとするもの。2020年NECと、2021年富士通とも業務提携し、共同研究開発を進めている。世界の巨人たちはNTTの10倍の研究開発費を投じて事業を展開してきている。果たして2025年大阪・関西万博でゲーム・チェンジが起こるか。

・EUは2022年7月5日、巨大IT企業への包括規制枠組みとしてデジタル市場法とデジタルサービス法を成立させ、前者は2023年、後者は2024年施行予定となっている。欧州のデジタル主権確立のための防波堤のためだ。違反すれば最大で全世界の売上高の20%の制裁金を科すという。

・今後2030年に向けて、EUのデジタル貿易圏、中国を中心としたデジタル貿易圏、米国を中心としたデジタル貿易圏に断片化された形で、インターネットの地政学的地図は描かれていくのではないか。だがブロック経済は世界を戦果に巻き込む遠因になったという歴史の教訓を忘れてはならない。日本は、欧州の動き、WEB3の動き(ブロックチェーン技術を活用した、新たな技術潮流。①金融分野でのDeFi分散型金融、②資産取引でのNFT日代替性トークン、③組織形態でのDAO分散型自律組織)を参考にしつつ、デジタル国家像を明らかにしていくべきである。