2023年1月26日第1版第1刷発行
帯封「進化論や認知科学によって、宗教はどこまで明らかになるのか。科学的宗教理論の歴史と方法、思想的側面を分析する。」「21世紀に登場した進化論や認知科学を用いた宗教理論は、宗教研究にどのような新たな視点をもたらしたのか。本書はこの疑問を明らかにするために、こうした科学的宗教理論の方法論、成立経緯、寄せられた批判および社会的役割について、幅広い資料を参照して分析を行っている。文献案内、用語解説も付され、宗教の科学的研究の基礎を理解できる。」
序論 問いと視点、研究方法と先行研究
1 本書の問いと目的
2 理論研究の3つの方向性
3 科学的宗教理論を取り巻く背景
4 現状の問題点とその解決方法
第1章 エリアーデ批判以後の日米宗教学の道程と課題
1 エリアーデ批判の論点
2 エリアーデ批判以後の北米宗教学における論点
3 日本における方法論上の議論の受容とその傾向性
第2章 進化生物学における宗教理論の発展
1 進化的視点とは何か
2 社会生物学の提唱とその批判
3 社会生物学を継承した人間行動研究手法の発展
4 進化生物学的視点に依拠した宗教理論
第3章 宗教認知科学の成立
1 初期のCSR理論-ローソンとマコーリー、ボイヤー、ホワイトハウス
3 一分野としてのCSRの成立過程
4 理論の総合と共通見解の確立
5 CSRの研究成果と以後の展開
小結
第4章 科学的宗教理論がもたらした論点
1 普遍主義/個別主義
2 説明/解釈・理解
3 還元主義/非還元主義
4 科学的宗教理論の「宗教」概念
5 科学的宗教理論の「科学」概念
6 既存理論との共通性
小結
第5章 科学的宗教理論が内包する反宗教思想
1 科学的宗教理論に依拠する無神論とその批判
2 いかなる点で科学と宗教は対立するか―暴露論証とナチュラリズム
3 宗教的ナチュラリズムの成立
4 宗教的ナチュラリズムの諸側面
第6章 科学と共存する宗教思想
1 神学をめぐる論争の再考
2 科学的宗教理論における科学と宗教の統合
3 宗教に親和的な科学としての効用自然神学
4 科学的宗教理論のもたらす社会的・政治的帰結
結論
1 科学的宗教理論の背景としての地の変動
2 科学的宗教理論の3つの側面における意義
3 科学・宗教・科学と宗教
4 今後の宗教学の可能性
・そもそもエリアーデへの批判的視点が1990年以降北米の宗教学研究者で共有されていることとの対比で日本ではモダニスト不在が明らかになる、という指摘の意味すら前提知識がないと理解できない(第1章)。
・社会生物学を継承した進化心理学(KWは遺伝子)と文化進化論(KWは集団)における宗教理論を解説しているが、こちらも基礎的素養がないと理解が困難(第2章)。
・認知科学に基づいた宗教認知科学(CSR)(第3,4章)、宗教的ナチュラリズム(第5章)、そしてそれと反対に科学的宗教理論は宗教を否定しない独立の姿勢、宗教と肯定的な関係を有する対話・統合の姿勢からの言説を提示し、後者を効用自然神学という概念で定式化(第6章)。第6章は何となく専門知識がなくとも凡そ理解できる。
個人的には効用自然神学に一番親和性を感じる。がそれを表現するほどにはこの分野に明るくない。もっと勉強せねばと思う。