もしも日本が戦争に巻き込まれたら! 日本の「戦争力」vs.北朝鮮、中国 小川和久 聞き手 坂本衛

2011 年2月15日第1版第1刷発行

 

表紙「2時間でよくわかる!Q&A緊急出版! 国はあなたをどこまで守ってくれるのか? 尖閣北朝鮮北方領土普天間…どうなる そしてどうする日本!」

裏表紙「何が正しくて、何が嘘なのか?Q&Aでズバリ解答!『日本の戦争力』完全入門‼

  • 北朝鮮はなぜ韓国を砲撃したのか?
  • 日本政府の対応の何がダメだったか?
  • 実際にノドンが日本に発射されたら?
  • 本当に『ソウルは火の海』になるのか?
  • 北朝鮮崩壊で起こる『最悪のシナリオ』とは?
  • 尖閣沖の中国漁船衝突事件、政府はどう対応すべきだったか?
  • 尖閣諸島北方領土竹島、どうするのが正解?
  • 中国海軍は太平洋に進出する力を本当に持っているのか?
  • 海上自衛隊は中国原潜を何度も“撃沈”している?など」

表紙裏「北朝鮮が勧告の延坪島を砲撃すると、テレビのディレクターが『日本にも砲弾が落ちるのですか』と聞いてきたりします。大砲の弾は最も飛ぶものでも70キロがせいぜいです。しかし、見たこともないし、日ごろ考えたこともないから、ミサイルも砲弾も同じだと思い込んでいるのです。ただ、これも無理のないことなのでしょう。私たちは普段、軍事について語ることも考えることもないからです。そこで、本書は読者の皆さまが日ごろ疑問に感じていたこと、知りたいと思っていたことについてQ&Aでわかりやすく、ズバリお答えしています。どうかお手もとに1冊、置いていただきたいと願っています。」

 

今から10年以上も前の本。10年前に読んでおくべき「日本の戦争入門書」である。10年前であるため、そこに示されている数値はいずれも古い。したがって数値を含めてアップデートしながら読む必要がある。それでもこの問題を考える際の基本的視点は十分分かり易いし、基礎的な考え方が身に着くと思われる。本当に10年前に読んでおけばもっとこの問題に関する関心は深まり日々の新聞やニュースや情報の接し方・吸収の仕方が変わったと思うので残念だ。が、覆水盆に返らず、である。今から学べるものを学ぶしかない。

 

PART1 もしも、「北朝鮮の戦争」に日本が巻き込まれたら?

この本の発行当時には、内閣には国家安全保障担当の首相補佐官が存在しなかった。2014年に法改正されてようやく整備されたらしい。

著者は北朝鮮の現実的な脅威に対抗しその軍事的暴走を抑止する有効なシステムとして1つは日米同盟、もう一つは国連軍を挙げる。昨今、北朝鮮からのミサイル発射が頻発される状況を受けて、日本は米国からトマホーク購入に動き出した。1発2億円ともいわれるトマホークだが、アメリカが展開するトマホークと日本が配備するトマホークは北朝鮮に対する抑止力に十分になるとの政治判断があったことは記憶に新しい。

日本が54年2月に8か国と「国連軍地位協定」を結んでいる(アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、オーストラリア、ニュージーランド、フィリピン、タイ)。米軍が日本から国連軍を出動するとき、自衛隊が後方支援任務に就く可能性など詰めておくべきだと著者は指摘する。

北朝鮮にミサイルを発射させない政治的システムと軍事的システムの2つを分けて考えるべきと著者は指摘する。TMDは後者であり、前者としての日米同盟と国連軍の機能を機能させるべきだと。

北朝鮮の特殊部隊は僅か25名で、韓国の延べ26万人もの軍人と警官をキリキリ舞いさせた(1996年)。韓国の防衛白書では北朝鮮が20万人の特殊部隊を増強と2010年公表している。したがって侮ってはいけないと警告を発する。

著者は北朝鮮核武装していると認識すべきだが、核保有国として一切認めるべきではないと主張する。

 

PART2 もしも、「中国の戦争」に日本が巻き込まれたら?

著者は、尖閣沖の中国漁船衝突事件の際、中国は船長の早期帰国を求めて様々なシグナルを送ってきたが、外交経験の浅い日本の政権は読み取ることができず(裁判所が勾留延長を決め検察が粛々と取り調べを進めたことで中国はキレてしまい)対日批判が強まった(政府は日中関係の大局と外交的主導権を握る上から判断して船長を想起に強制送還処分とすべきだった)。対中国外交には強硬姿勢の背景にある中国のメンタリティを理解することが欠かせない、とする。

著者は、日本政府が尖閣諸島をめぐってただちにやるべきことは、①尖閣諸島が日本の領土であるという国際的アピール、②領海法・国境法の整備、③尖閣諸島自衛隊の沿岸監視隊を配置することだと主張。

また、国境警備隊という準軍隊として位置づけられる海上保安庁は、国境や領海がらみの紛争を本格的な戦争にエスカレートさせないための安全装置であり緩衝装置だ。海上自衛隊との望ましい役割分担をさらに追求しなければならないとする。

さらに、中国人民解放軍中国共産党の軍事部門だが、党と軍の間にはズレがある。経済発展による空洞化に危機感を抱き、既得権益の確保に走る軍部が党に揺さぶりをかけ緊張状態を生み出している。日本はそんな中国の現状を見据え、総合的な対中戦略を構築すべきだとする。もっともこの点は執筆時の状況であり、習近平体制となりどのように状況変化が起きているのか、学ばなければいけない必要性が高いと思う。