寿命遺伝子 なぜ老いるのか 何が長寿を導くのか 森望

 

2021年3月20日第1刷発行

 

裏表紙「遺伝子ハンターたちの熾烈な競争で見えてきたもの 1988年、米カリフォルニアで、小さな線虫の寿命がある遺伝子の欠損で大幅に延びたことが報告された。世界初の寿命遺伝子「エイジ1」発見の瞬間だった。人類の究極の願い「不老長寿」は可能になるのか?各国の叡智」による、熾烈な遺伝子獲得競争が始まった。次々に見つかったさまざまな個性をもつ寿命遺伝子は私たちの「残り時間」をどのように変えるのか?スリリングに描きだされる研究の最前線!」

 

線虫実験で2本とも染色体のエイジ1遺伝子が壊れると長寿になる。ダフ2遺伝子の変異体はエイジ1より平均寿命も最長寿命も倍加した。この時ダフ16がしっかり機能しないといけない。

マウス実験ではレスト遺伝子が変異すると短命化し、あると長寿化した。

ヒトゲノム上にはレストの結合遺伝子は1946個ある。

代表的な時計遺伝子の一つクロック1は線虫だけでなくマウスでも欠損すれば長寿化した。

ガンを引き起こす遺伝子シックP66を欠損させるとマウスは長寿化した。が自然界では太っちょマウスはp66を欠損させても長寿にならない。

ショウジョウバエではメトセラ遺伝子が長寿遺伝子として発見されたが、何らかのタンパク質をコードするシグナルを発信していた。それがメトセラに内在するアンタゴニスト(メトセラ受容体の機能の阻害剤)、スタント(促進剤)であることが発見された。

酵母からは寿命遺伝子サー2が発見。そしてサー2は線虫でも寿命延長をもたらす長寿遺伝子であることが確認された。ショウジョウバエでもサー2には寿命効果があるが、サー2の発言量が本来の10倍以上になるとかえって短命になる。酵母サー2に最も類似したサーティ1を過剰発現させたマウスでは寿命が延びた。サーティ1ないし7はヒトにも存在している。この本ではサーティ6の過剰発現マウスで寿命延長が確認された。他のサーチュインメンバーが寿命変動を起こすことは今のところ知られていない。サーチュイン遺伝子を活性化する物質がレスベラトロールというポリフェノールの一種であることが発見されたただレスベラトロールだけではフレンチパラドックスは解決できない。

更に酵母の経時寿命を制御するのはサー2ではなくトールであることが明らかとなり、線虫でもショウジョウバエでもトール系遺伝子を抑制することで寿命が延びることが確認された。免疫抑制剤ラパマイシンをマウスに投与すると寿命が延びる。

アンプキナーゼも長寿遺伝子である。運動することで活性化される。

結局、これら12種類の寿命遺伝子(ヒトゲノムには3万の遺伝子があるのに)が寿命制御に関して中心的役割を果たしている。

結構、難しい箇所も多かったが、これらが本書のエキスだと言えると思う。