文豪が愛した文豪 大切な人への熱すぎる思い 真山知幸

2023年1月23日第1刷発行

 

帯封「『あこがれ』『友情』『愛憎』-33組の強烈な個性」「恩師、大先輩、親友、ライバル-文豪同士の『愛』のかたちは多種多様 本書で紹介する文豪たちは、一般社会に馴染むのを拒否するかのような、個性的なタイプが多い。そんな文豪たちをかけ合わせれば、起きる化学反応はおのずと強烈なものとなる。彼ら彼女らの『大切な人への熱すぎる思い』は、読んでいるだけで感情が揺さぶられて、なんだか元気が出てくるものだ。著者もこの本を書きながら、文豪たちをよりいっそう好きになっていった。読者の皆さんにも楽しんでもらえるとうれしい(『はじめに』より)

◎新聞は『崇拝』と表現 芥川龍之介に対する太宰治の強烈な愛

夏目漱石を敵対視 だけど旅先に押しかけ借金を頼む内田百聞

尾崎紅葉の写真を毎朝拝んでいた? 泉鏡花の感謝のかたち

◎恋も文学も我が道を行く森鴎外永井荷風の交流と意外な共通点

◎酒・喧嘩・宮沢賢治を好きすぎて意気投合 中原中也草野心平

裏表紙「憎い奴は殺さなければ気がすまない、好きな人は抱きつかなければ気がすまない、僕はここに居ます(萩原朔太郎から北原白秋への手紙より)」

 

目次

一、あこがれの章

  太宰治芥川龍之介 自他ともに認める芥川大好き人間

  堀辰雄芥川龍之介 よき理解者との出会いと別れ

  芥川龍之介夏目漱石 尊敬する師とのハラハラする距離感

  内田百聞→夏目漱石 骨の髄まで師を愛す漱石オタク

  泉鏡花尾崎紅葉 師への崇拝度は文豪随一

  幸田露伴坪内逍遙 仕事を辞めて作家を目指した明治の文学少年

  永井荷風森鴎外 境遇の似通った孤高の文学者たち

  谷崎潤一郎永井荷風 女好きの作家たちの意地の張り合い

  小林多喜二志賀直哉 熱烈なファンレターが小説の神様を動かした

  川端康成菊池寛 ムチャぶりばかりの弟子と気前が良すぎる師

  夢野久策→江戸川乱歩 あこれがの相手なら酷評されても感激

  中原中也宮沢賢治 型破りな詩人による型破りなあこがれ方

三好達治萩原朔太郎 感情的な詩人に初めてできた若い友人

石川啄木与謝野晶子 自信家の歌人が姉のように頼りにした人

寺山修司石川啄木 作品にも啄木好きが表れる

二、友情の章

夏目漱石正岡子規 恋人のようにふざけ合う特別な関係

芥川龍之介佐藤春夫 他人に仲が悪いとは思われたくない

芥川龍之介菊池寛 タイプは正反対だが文学で結びついた

萩原朔太郎室生犀星 何があっても壊れない強すぎる絆

萩原朔太郎室生犀星北原白秋 手紙からほとばしる詩人たちの熱い交友

川端康成横光利一 ピンチの友を救うのは当たり前

梶井基次郎三好達治 感性豊かな作家の予期せぬ言動

太宰治坂口安吾 酒を介してすぐに仲よしになる

太宰治林芙美子 似た者同士だから気を許し合った?

中原中也草野心平 互いに酒・喧嘩・宮沢賢治好きで意気投合

安岡章太郎遠藤周作 ひねくれものたちの深い信頼

三、愛憎の章

  檀一雄太宰治 無二の親友だが遠い存在でもある

  太宰治中原中也 中也が気になるけどたじたじの太宰

  大岡昇平中原中也 言葉をぶつけ合って特別な関係へ

  室生犀星高村光太郎 カッコいい先輩へのあこがれと嫉妬

  田山花袋柳田國男 大切だからこそ許せないことも

  三島由紀夫太宰治 太宰嫌いを繰り返し語った理由

  太宰治井伏鱒二 時には慕い、時には反発

 

・興味深いエピソード集。玄人好みの荷風は70歳になってもストリップに通いつめ独身を通し、谷崎に対して“すっかりおじいさんになっている”などとけん制。共に79歳で亡くなる。菊池から度々無心していた康成は新婚旅行の費用200円(大卒初任給4か月分)をもらっても散財して旅行に行けなかった。親友だった朔太郎と犀星だったが、夫婦不仲の話を聞いた犀星はそれを種に小説化して暴露するも、離婚を後押ししてくれたと理解して犀星の暴走を許した等々。

 知らなかった文豪の師弟関係、親友の関係、愛憎の関係など、すっきりとコンパクトに読める一冊。