春画入門 車浮代

2015年9月20日第1刷発行

 

表紙裏「大英博物館で記録的な成功を収め、先に世界を驚かせた春画展がついに日本へ。浮世絵、春画の基本の『き』を、小説『葛重の教え』の著者であり江戸料理の研究家が、易しく面白く解説する決定版入門書。」

 

第1章 浮世絵の発祥

第2章 浮世絵の技法と役割

第3章 名作春画を描いた浮世絵師たち

第4章 春画のさまざま

 

永青文庫で日本初の「春画展」が2015年秋に行われていた!2013年秋から14年にかけて大英博物館で開催された凱旋記念展にあたり、その11年前にヘルシンキ市立美術館でも好評を博していた。本でこっそり読むことしかできなかった時代から変わろうとしている。京都にも「細見美術館」で同様な展覧会が催されていたようだ。

浮世絵の創始者岩佐又兵衛またの名を浮世又兵衛。荒木村重の側室だしの子。浮世絵版画の創始者は『見返り美人』の作者菱川師宣

平安時代初期に中国から「偃息図(えんそくず、おんそくずとも読む)」と呼ばれる房中術(性愛の手引書)を描いた彩色画冊が伝わり、平安時代後期に大和絵師たちがこれに影響されて貴族や僧侶の求めに応じて性技の手本図として描くようになった。室町時代には庶民の間にも広がり桃山時代には明から「春宮秘戯図」が伝わり、春宮図の伝来で春画の人気が高まった。江戸時代に入り京都で初めて木版摺による春本が刊行されたのは1650年代半ば、挿絵が入るようになり春画木版画で摺られるようになる。性器の誇張は偃息図には見られず日本独自の表現手法。

・浮世絵師として、上方春画の月岡雪鼎、西川祐信、鳥居派の鳥居清長、勝川派の勝川春章と葛飾派の葛飾北斎、北尾派の北尾重政、北側歌麿、歌川派の歌川豊國、歌川國貞、歌川國芳らが登場する。六大浮世絵師としては、鈴木春信、鳥居清長、喜多川歌麿東洲斎写楽葛飾北斎歌川広重イサム・ノグチの父野口米次郎が提唱)、これに歌川國芳を入れて七大浮世絵師ということもある。

八代将軍吉宗享保の改革)による好色本禁止令、11代家斉の治世(寛政の改革)で出版統制令、12代家慶の治世の時にも水野忠邦天保の改革)による人情本禁止令が出る。この間出版文化を守る戦いが続く。

・西洋人画家ベスト20のうち、印象派の画家モネ、ルノワールゴッホセザンヌドガゴーギャンの6人がランクインしているが、いずれも浮世絵の影響を受けている。リカル・ブルの論文『春画ジャポニスム』では、春画が19世紀マスヨーロッパのアーティストたちに従来のアカデミズムやタブーに囚われない作品を創作するインスピレーションを与えたと指摘。「私たち日本人も、誇るべき文化として春画を見直す時が来ているのかもしれません」として本書を締めくくっている。

 

春画の知識など殆どなかったので大変勉強になった。