メモの魔力 前田裕二

2018年12月25日第1刷発行 2019年8月30日第17刷

 

売れに売れた本という印象だ。帯封には「もっとも読まれたビジネス書2019年上半期ベストセラービジネス書オリコントーハンTSUTAYA全て第1位!!39万部突破!」とあった。

第1章 メモで日常をアイデアに変える

第2章 メモで思考を深める

第3章 メモで自分を知る

第4章 メモで夢をかなえる

第5章 メモは生き方である

ざっと拾い読みしてみたが、これはこの著者だからこそできた、この著者用のメモの効用を謳ったものだと思う。私も何種類かのメモは付けているが、一番気を付けているのはメモに時間を取られ過ぎないこと。もしメモを災害で無くしたりした時に頭の中が空っぽだとメモを取っている意味がない。大事なファクトやアイデアはそれこそ頭の中に叩きこむ。これが私の鉄則。しかしどうしても忘れてしまう。その忘れてしまうのを防止するのにはメモが一番。どうして私が何種類ものメモを付けているかと言えば、毎日見るもの、時々見返すもの等々、メモを見る目的には色々なバリエーションがあるからだ。したがって短いフレーズもあれば長いものもあるし、色を付ける場合もあれば付けない場合もある。ただ時系列的に言えば、自分が今日やるべきこと、数日のうちにやるべきこと、数カ月単位でやるべきこと、3年、5年、7年、10年単位でやるべきこと、を整理するのは大事だと思う。またモチベーションを維持するためには、当面の目標、近未来の目標、そして心の底からやりたいことを明確にすること、更には面白ワクワク感を自分に出すために、まだ誰も手をつけていないこと、奇抜な発想は思いついたらメモする、なんてことは日々やっている。それこそ箴言なんていうのは正確にショートフレーズで頭に叩きこむのと同時に必ず忘れて正確性を失うからメモする。更には自分を今以上に精神面・経済面・肉体面で良くするのに今何が必要か同様に自分個人の仕事のレベル(質・量ともに)を高めるには何をすべきで何を他人に任せるべきか、職場全体を向上させるために改善点は何でどこまで出来ていてどこからが未着手なのか、家族・親族関係や友人関係を良くするために今できることやこれからやるべきことは何か。更に人脈を広げたり研究テーマを深めたり広げたり等々、沢山自分にとって必要なテーマを設定し、それを自分の関心があるごとに、自分に分かり易くまとめる等々、これが私のメモ術だ。もっとも、本書の中でも、理念としては賛同するところが多々あったのは事実。本の価値そのもの・クオリティーとしては高いと思う。ただ私とは違ったということだ。

 

丸腰国家~軍隊を放棄したコスタリカ 60年の平和戦略~ コスタリカ研究家 足立力也

2009年3月1日初版第1刷発行 2017年9月30日第3刷発行

 

どういう経緯でコスタリカが軍隊を放棄することになったのか?その経緯を知りたくて資料を探していたところ、この本にようやくたどり着いた。少し古い本だが、多角的にコスタリカのことを取り上げている。良いところも悪いところもそれぞれあるというのが良くわかった。

第1部「『丸腰国家』コスタリカの真実」は第1章から第4章まで、第2部「『丸腰国家』をつくる人たち」は第5章から第8章までで構成されている。

軍隊放棄の経緯についても最も有力な理由とされているのは財政的資源が厳しかったというもの。もっともそれだけではなく、内戦に勝利したフィゲーレスが指導した反政府勢力が、内戦に敗れた旧政府軍を解体し、フィゲーレスが自らの支配を盤石にするために武器を取り上げ組織を徹底的につぶすためにフィゲーレスは軍備放棄を宣言した。1949年11月7日新憲法が発布され即日施行。12条に非武装憲法を定め丸腰国家が誕生する。

更に1983年11月17日、モンヘ(当時の大統領)が積極的永世非武装中立宣言を示す。スイスは消極的永世非武装中立という立場を取っている。この積極的というのは中立にかかり、誰かと誰かが争っていた場合にはどちらの味方をしないが仲介者としては積極的に介入するという意味。アリアス大統領は内戦の中米和平交渉に乗り出し1987年ノーベル平和賞を受賞。コスタリカ憲法31条は「国はすべての政治的避難民の避難地である」と定めている。このあたりまでが第1章「コスタリカはどうやって軍隊をなくしたのか」、第2章「軍隊がなくても大丈夫なのか」。第3章では「コスタリカには本当に軍隊がないのか」という項目で警察組織が軍隊化していないのかを検証し、軍事化していると指摘する向きもあるが、警察の脱軍事化というメンタリティーの完成途上にあると分析している。第4章「コスタリカは軍隊を持てるのか」というテーマで法的には持てるが、「持たない」し「持てない」という解釈を共有していると分析。

第2部ではコスタリカという国を多角的に分析している。国家予算の5分の1を教育費に割いており、GDP比でも日本の2倍を教育費に充てている。コスタリカの刑務所は塀がなく、愛の部屋まで設置されている。そこまで好待遇の理由について所長は受刑者に人権意識を目覚めさせることで更生が図られると説明。この刑務所を出た元受刑者の再犯率は2割程度にとどまっているとか。男尊女卑の問題は現存するが、国会議員の3割以上は女性。

2000年度には父親に認知されない赤ちゃんが5割を超えたので親権責任法が制定され母親が父親を指名できる制度に切り替わった。医療も無料で受けられる。不法入国者もその例外ではない。ただ賄賂文化は横行しており著者も税関や交通警察官から露骨に賄賂を要求され止む無く応じた経験談が紹介されている。毎年12月1日は軍隊廃止記念式典を挙行し国家行事として式典を執り行っている。平和とは終わりなき闘いなのです、という言葉で毎年締めくくられているようだ。最後にコスタリカの人々は平和のイメージを反戦という単純かつ否定の否定で捉えるのではなく肯定の肯定で捉え、人権・民主主義・文化・尊厳・環境など、日常の身近なところにあると捉え、自分自身の内面の問題であると捉えているという。

果たして日本はこの先どう進むのであろうか。日本でも単純に同じことが出来るわけではないだろうが、やはり理想は理想として維持して追究していきたいと思う。

大鏡 那須田淳

2014年3月10日第1刷発行 2015年2月28日第2刷発行

 

作者は源利房・弟の顕房。藤原道長菅原道真陰陽師安倍晴明等々が登場する。歴史上の人物のエピソードを紹介するのは190歳の大公世継と180歳の夏山繁樹という長寿の老人。

尊仁(たかひと)親王(禎子内親王の子。後の後三条天皇)が主人公となり、藤原道長こと入道と激しく対立する。その藤原道長が栄華を極めるまでのストーリー。

花山天皇が、赤ん坊をお腹に宿したまま藤原氏師が死んでしまったため、傍に仕えていた藤原道兼から一緒に仏門に入ろうと勧められて19歳で出家すると、道兼は父兼家に命じられて帝を裏切る。この真相を突き止めるため、尊仁は俊房とともに陰陽師の力で時空を超えて大鏡を通して物語に入っていく。しかも突然道長も一緒になって。(これは凄まじいファンタジーだ)

最初は菅原道真が左遷されて太宰府に移る直前の場面。道真が藤原時平の陰謀に陥れられたと思い、怨霊となって雷神になった道真をまつるために大宰府天満宮を建てたが、その実、時平は大和魂のある人で道真を陥れたのではないかもと道長は言う。部屋が変わり村上天皇の側室髪長姫が登場。帝が千を超える歌がおさめられている古今和歌集の暗唱テストをするも、いずれもスラスラと答えてしまう。次の部屋は内裏の奥。花山天皇が深夜、道隆・道兼・道長三兄弟を肝試しに引っ張り出す。すると、道隆は幽霊に、道兼は鬼に出くわし、道長も猫に化けて人の言葉を話す尊仁と俊房に出くわしてたいそう驚くが、鏡の仙人の使いの者として猫から話を聞いて世直しを決意する。ここで道長だけが物語から抜けていく。自分の未来を知ることはつまらない、まだ歩いていない新雪の中を歩んでいきたいと述べて。次のふすまをあけると、兼家が亡くなり道隆が跡を継いで関白になったことを面白く思わなかった道兼(花山天皇を引退させた黒幕)は兼家の法事に姿を見せない。次のふすまを開けると、道隆の屋敷の中で道隆の長男伊周(これちか)と競射で争い、道長が勝利宣言をしたうえで完膚なきまでに伊周を負かす。翌年道隆、道兼が次々となくなり、遂に道長が政治の中心に座る。ここで本書は終わる。ただ実際の大鏡はこの続きがあるそうだ。

なかなかの時空を超えたファンタジー。筆者の筆力のせいでもあるのだろうが、とても面白かった。歴史の勉強にもなるので、一石二鳥のお得感がありますね。

しらべよう!47都道府県 郷土の発展につくした先人 ④文化 監修/北俊夫

2021年4月初版第1刷

 

センジンファイル142 宮城 一力健治郎(1863~1929)

 「河北新報」を創刊し東北の発展に力をつくした

 

センジンファイル143 山形 斎藤茂吉(1882~1953) 

  精神科医歌人 ふたつの道を歩む

 精神科医として働きながら1万8千首の短歌をつくる

 

センジンファイル144 茨城 横山大観(1868~1958)

  東京美術学校・校長の岡倉天心が学校をやめると、大観は仲間とともに学校をやめ、日本美術院をつくる。日本画の新しい技法「朦朧体」を生み出す。生涯に2000点をこえる富士山の作品を残す。台東区池之端1-4-24に横山大観記念館があるので、行ってみよう。

  

センジンファイル145 千葉 伊能忠敬(1745~1818) 

  49歳で隠居して50歳から天文学者高橋至時(よしとき)に弟子入りし、55歳になって幕府から測量許可が出て日本全国測量の旅に出る。1日40km、旅は10回を超える。歩いた距離は4万km、地球一周と同じ長さ。地図の完成を見ずに73歳で亡くなるが、弟子が3年後に完成させる。

 

センジンファイル146 滋賀 国友一貫斎(1778~1840)

  日本初の反射望遠鏡をつくり宇宙をながめた鉄砲職人

 

センジンファイル147 大阪 与謝野晶子(1878~1942) 

  “まことの心”を短歌にこめ、まっすぐに生きた歌人 歌集「みだれ髪」が後に夫となる鉄幹によって出版される。日露戦争に行く弟を心配した詩「君死にたまふこと勿れ」が世に衝撃を与える。11人の子を育てあげ、数万種の短歌を詠み、評論家、作家、教育者として活躍。

 

センジンファイル148 広島 井伏鱒二(1898~1993)

  『黒い雨』で“広島”を伝えた作家。ジョン万次郎漂流記で第6回直木賞受賞。「ドリトル先生」シリーズの翻訳も手掛ける。1966年黒い雨で野間文芸賞受賞。95歳で没。

 

センジンファイル149 愛媛 正岡子規(1867~1902)

俳句を文学の新たなジャンルとして確立。写生を俳句に取り入れる。「歌よみに与ふる書」で万葉集を評価し、古今和歌集から千年続く詩歌の技法をくだらぬとして短歌の改革も目指す。台東区根岸2-5-11に子規庵がある。行ってみよう。

 

センジンファイル150 高知 牧野富太郎(1862~1957) 

  日本の植物分類学の父。独学で植物の知識を身につけ、78歳の時に作った『牧野日本植物図鑑』は今でも使われ続けている。94歳で亡くなるまで約40万点の標本を収集。妻スエコが富太郎を支えた。練馬区立牧野記念庭園記念館(東大泉6-34—4)にはスエコザサが植えられている。

 

センジンファイル151 佐賀 辰野金吾(1854~1919)

  西洋の建築を学び東京駅をつくった建築家。今の東京大学工学部に最下位で入学し首席で卒業。

 

一力健治郎さんのことはこの本で初めて知りました。

 

 

愛の妖精 ジョルジュ・サンド 足沢良子 

1973年1月30日第1刷発行 1986年9月30日第14刷発行

 

19世紀生まれのフランス作家。無名だったショパン、リストの天分を見つけ出して紹介した。動乱の時代で人々の心がすさんでいる時には、なごやかな心あたたまる物語を書いて人の心をなぐさめることが芸術家の使命ではないのだろうかと考えて、人生の後半は創作に専念する。その中で生まれたのが「愛の妖精」をはじめとする田園小説。愛の妖精は2,3カ月で書き上げる。

物語の前半は裕福な家庭で生まれた双子の兄弟ランドリーとシルヴィネだが、別々に暮らす。シルビィネは成長するとともにランドリーに嫉妬し、ランドリーは健全に育っていく。ある時失踪したシルビィネをファデットの助けもあって救出したランドリーは村のお祭りの際にファデットと踊ることを約束させられる。ファデットは高慢に見えたランドリーの鼻をへし折ろうと当初は考えていたが、約束を守りファデットがいじめられている時には助ける勇気を持ったファデットにランドリーは好意を抱く。ファデットの「あんたが足で踏んづけるようなつまらない草でも、それがなんにきくかちゃんと知っているわ。だから、その草のききめがわかると、つまらない草の匂いや形をばかにすることはできなくなるの。こんなことを言うのも、ちょっとあんたに、あることを考えてもらいたいからよ。それは、人間にも草花にも言えることなんだけど。つまりね、みかけがきれいでないものを、みんなばかにしすぎるってことなの。そのために、それのもってる、よいところを見のがしてしまってるのよ」の言葉は印象的だ。ファデットとランドリーは友達になることを約束する。しかし直後からランドリーはみすぼらしいファデットを瞬間的にも好意を抱いたことに恥ずかしさを感じる。ファデットはランドリーと当初躍る約束をしていた美しいマドレーヌにどうしてランドリーが自分と躍ってくれたのか事の経緯を話して仲直りするよう伝える。その話を聞いたランドリーはファデットの心が美しいことを改めて確信し、ファデットが普段連れ歩いているみすぼらしい弟ジャネーをどうして面倒見ることにしているのかの理由も聞いてファデットと弟が周りから言われているほどに酷い人間ではなく外見から判断して本質を見誤っていることに気付いていく。またファデットがきちんとした身だしなみをすれば美しくなるとも話すとファデットもそれに応えてランドリーがファデットと気づかないくらい美しい女性に変貌する。しかしファデットはランドリーの事を思い、出来るだけ会わないようにする。ランドリーがファデットとようやく話しができた場面にシルビィネが出くわし、自分より仲のよい話相手がいることに嫉妬する。又二人の仲を快く思わない、否、自分にひれ伏すことがないランドリーにいらだちを感じたマドレーヌは二人の仲を町中に広めて、ついにランドリーの父親の耳に入って、ファデットの母親が良くない人であり、ファデット自身も良くない女性であるからつき合うのをやめるよう説得する。これにランドリーは腹を立て父と対立。ファデットは別の町に奉公に出てしばらくランドリーと会わない決意を固め、そのことをランドリーに伝える。ランドリーは反対するが、ファデットは今から5年も前からランドリーのことが好きで、奉公に出て周囲が認めてくれる女性になって戻ってくることを告げ、その決意の固さと純潔さにランドリーは感動する。

ファデットは育ての親が危篤だと聞いて奉公先から帰ってくる。しかし亡くなってしまう。実は沢山の財産を残して。誰に相談してよいか分からないファデットはランドリーの父親に相談し、父親の言うとおり、誰にも財産のことは言わないことを約束する。父親はファデットの奉公先での仕事ぶりに非の打ちどころがないことを確認し、ランドリーの妻として迎えることになる。一方、シルビィネはランドリーを奪ったファデットを憎み精神的な苦痛から体調を崩し病気になる。それでもファデットは献身的な看病を続けるが、ある時堪忍袋の緒が切れ、シルビィネの病は心のねじ曲がった精神から来ている、異常な嫉妬心を自制できず、周りが自分を心配して言うことを聞いてくれるのを願っている根性曲がりだと痛烈に叱咤し、目が覚めたシルビィネは元気を取り戻す。ランドリーとファデットはめでたく結婚し、子を授かる。ハピーエンドで終わるかと思いきやシルビィネが突然志願兵になると言い出し、戦争で戦果を挙げて大尉にまでのぼりつめ、最高の勲章を得るまでに成長を遂げる。なぜ突然家を出て軍人になったのか。ファデットを好きになってしまった自分が家を出る必要があったからだとファデットは打ち明けられ、ランドリーの母親はきっとそういうことだろうと薄々気づいていたのだと告白し、それを聞いたランドリーの父親は以前シルビィネは人を好きになったらランドリーのことを忘れて生涯その人しか愛さないだろうとお湯屋のおばあんから言われたが、どうやら一生結婚できなさそうだな、と言ってジエンド。

「愛の妖精」というタイトルはなかなか良いタイトルだ。なごやかな心温まる物語というのはこういう小説をいうのだろうなあ。

雨月物語  金原瑞人

2012 年 8 月 10 日第 1 刷発行 2014 年 2 月 28 日第 2 刷発行

江戸時代後期の上田秋成の作品。

1 白峰
崇徳院藤原頼長源為義平忠正たち)が体仁天皇が 16 歳で亡くなったので、次の
天皇は自分の息子だと思っていたのに、弟の後白河天皇天皇になったため、崇徳院後白河天皇との間で起きたのが保元の乱(1156)。崇徳院が詠んだのが「瀬を早み岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞおもふ」。その崇徳院のお墓がある香川県白峰山にお参りして崇徳院の亡霊と出会い、恨みや怒りをぶつけられるというお話。

2 菊花の約(ちぎり)
応仁の乱の後の戦国時代に播磨の国・加古で丈部(はせべ)左門が、病身の出雲の国・
赤穴(あかな)宗衛門を助け、義兄弟の契りを結び、宗衛門は 9 月 9 日(長幼の節句)に戻ると約束して出雲の国に戻る。9 日の夜中になって宗衛門はようやく戻って来るが、監禁されたため自害して幽霊となって戻ってきたというお話。

3 浅茅(あさじ)が宿
間もなく室町時代になる頃、下総の真間に住んでいた勝四郎は、秋には帰ると妻に言い
残して商売のため京都に旅立つ。ところが享徳の乱が起こり戦国時代に突入して関東に帰ることが出来ず、そのまま京都に留まる。妻は戻ってこない夫を待ち続けた。7 年後、ようやく勝四郎は妻の下に帰る。一晩、妻から恨み言を言い続けられる。翌朝、ぼろやで屋根も布団もなく、妻がいないのに気づく。妻の亡霊が語り掛けていたのだった。「さりともと 思ふ心にはかられて世にもけふまでいける命か」

4 夢応の鯉魚(りぎょ)
大津市にある三井寺の興義がある時夢から覚めた際に鯉の絵を描く。ある年、病気にな
り 7 日間寝込んだ後、息をしなくなった。その時、臨死体験をして、琵琶湖の中を魚と一緒に泳いでいたとか。書いた鯉の絵は亡くなった後に湖に蒔いたら鯉が絵から抜け出して泳ぎ回ったとか。ファンタジーの世界のお話でした。

5 仏法僧
江戸時代のお話。伊勢に住む拝志夢然と息子の作之治が旅に出た。高野山に登ると、コ
ノハズクがブッポウソウと鳴いていた。ある時、豊臣秀次の幽霊が出て、歌を詠まされた。「鳥の音も秘密の山の茂みかな」と。秀次が下の句を詠めと家来に言いつけると「芥子たき明すみじか夜の牀(ゆか)」と詠む。二人を阿修羅に連れていけと秀次は家来に命じるが途中で断念して消えていくというお話。

吉備津の釜
農家のせがれ井沢正太郎は放蕩息子で、身を固めれば落ち着くだろうと考えた両親は
吉備津仁社の娘磯良と結婚させようと考えた。結婚する際、吉備津の釜で将来を占うと凶と出たが、そのまま結婚させた。正太郎はしばらくすると放蕩癖が首を擡げ、袖という女を請け出して傍に住まわせる。呆れた両親が正太郎を座敷牢に閉じ込め、磯良は正太郎のためにその後も尽くすが、磯良を裏切って座敷牢を出ると再び袖の下に走る。磯良は恨み骨髄。磯良の呪いのために袖が死に、正太郎にも死相が出る。49 日が過ぎるまで陰陽師のお札で守られる。ようやく最後の夜が明けたと思って外に出ると、まだ夜中。その瞬間、正太郎の姿は影も形も無くなって血だまりだけが残っていた。

7 蛇性の婬
和歌山県新宮市の不良息子豊雄が雨宿り先で知り合った県(あがた)の真奈児(まなご)を訪ねて一晩泊り、金銀散りばめられた太刀を贈られて、翌日帰る。熊野速玉神社の宝物が次々と盗まれる事件が起きていて豊雄が捕まる。事情を話して真奈児の家を訪れるとそこには盗まれた宝物が一杯。再び真奈児と出会い結婚してしまう。翌月吉野に家族で旅をすると、老人が大蛇の妖怪であると見破り、豊雄は新宮に戻り富子と再婚する。ところが真奈児は富子にとりつく。最後は祈祷の得意なお坊さんが真奈児を袈裟に閉じ込めておしまい。

8 青頭巾
快庵禅師がある時栃木県富田まで旅に出かけた際、山の鬼と見間違えられる。聞くと近
くの寺で僧侶が少年と暮らしているうちに少年が死んでしまったが、可愛さの余り僧侶は少年を食い尽くしてしまった。鬼退治に立ち上がった快庵は寺に出かけて鬼となった僧侶に漢詩を授ける。再び寺に出かけると授けた漢詩を詠み続けていた鬼を一喝して鬼は消滅した。

9 貧富論
時は安土桃山時代、処は陸奥の国、お金が大好きな岡左内が、ある時、お金の精霊から、お金を大事する人の所にお金は集まるという話を聞く、というお話。

 

若きウェルテルの悩み ゲーテ 斎藤栄治訳

昭和46年7月1日第1刷発行

 

表紙裏に「若き日の生命と感情をすべて吐露し、合理主義や因習からの解放を叫んで、革命的文学運動〈疾風怒濤〉の旗手となった文豪ゲーテの古典的名作。主人公ウェルテルの自己陶酔と絶望、既成社会への反撥と挫折のドラマを通して、青春の哀歓をみずみずしい抒情に造形し、時代精神の予感と憧憬を先取りした不朽の書!」と。

恋の悩みから遂には自殺に至ってしまうウェルテル。当時、恋愛に苦しんで自殺するという小説自体が初の試みだったらしく、一大センセーショナルを引き起こしたらしい。ウェルテル効果というんだとか。

さて、若きウェルテルは舞踏会で法老官の娘ロッテという女性に一目惚れしてしまうが、ロッテにはアルベルトという婚約者がいる。ロッテに盲目的になったウェルテルは彼の地を離れる。新たな土地でウェルテルは官職を努めるが、低い身分であることを嘲笑され傷つき退官する。ロッテのいる地に戻るが、ロッテはアルベルトと結婚して幸せな家庭を築いている。恋に煩悶するウェルテルは自殺を決意し、従者をやってアルベルトのピストルを借り受ける。その際、ロッテが手渡してくれたことを従者から聞き、感激して深夜12時に遺書を書き終わって自殺を遂げる、というお話。

この小説がどうしてここまで古典的名作であるとか不朽の書と言われているのか、まだよく呑み込めていないところがあるが、キリスト教的世界観の中で失恋により自殺するというテーマ設定自体が禁断のテーマに取り組んだ初の小説ということにあるのだろうか?誰にでも失恋の経験は大概あると思うが、死にたくなるような気持ちになるのと本当に死んでしまうのとでは大違い。失恋で本当に死んでしまうというあってはならない世界を小説の中で創出させたゲーテに罪はないのかどうか。ここが一般的にどう評価されているのか少し関心がある。ちなみにゲーテ自身の失恋を題材にしたということらしい。