ファーブル昆虫記 奥本大三郎

55歳の時から約30年かけて書き上げた全10巻からなる自然科学者の古典。
糞転がしで有名なスカラベの話に始まり、ゾウムシを刺して動けなくする蜂の行動を、事実を観察することにより真実を解明していく手法は、忍耐そのものです。
ゾウムシの運動器官を司る3つの神経節が集まっている部分、この一点を蜂が刺して麻痺させているという事実を解剖の結果により知ったファーブルは、神経節が離れている他の昆虫にも同様の実験を行い、その場合には一時的な麻痺に止まることを確認し、結局幼虫の餌にするには神経節が集中している昆虫であることが必須であることを突き止めている。これを論文で発表し、科学アカデミーのモンティヨン賞を受賞。
また昆虫の本能による緻密な行動を見事に明らかにするとともに、実験を繰り返すことで論理的思考力・経験によって行動する力はないとも結論づけている。
そして83歳で10巻を完成させたファーブルはその後も観察と執筆をつづけ、国際昆虫学会の記念切手にファーブルが掲載され、またさまざまなアカデミーの名誉会員となり、91歳で生涯を閉じる。
墓石には「死は終わりではない。より高貴な生への入り口である」との言葉がラテン語で掘られているらしい。