「情報」を学び直す 石井健一郎

面白い本を見つけた。平成19年の本なので少し古いが、この手の分野で分かりやすいものが少ないだけに貴重な資料だと思う。以下、私が関心を持った記述の要旨を記す


2 「情報」の生い立ち

1「情報」の語源

明治9年刊行の「佛國歩兵陣中要務寛地演習軌典」(酒井忠恕訳)に「情報」という言葉が最初に使われた(小野厚夫「情報という言葉を尋ねて(13)『情報処理』)。

2 「情報」の特徴

(1) 「敵情の報知」「敵情の報告」に由来することから明らかなように、情報には、本来、受け取る、あるいは伝えるという意味がこめられている。内容より、内容の授受という行為に重点が置かれている。

(2) その内容は受け取る側にそれまで見たことも聞いたこともない新鮮なものでなくてはならない。時間の経過とともに情報は知識に変化する。知識は情報から有用なものを蓄積したもの。

(3) 同じ内容でも情報になり得るか否かは受け取る人に依存する。

(4) 情報の持つ価値にも個人差がある。情報に価値があるか否かはそれを受け取る人の知識、必要度、環境、心理状態などによっていかようにも変わる。

(5) ある時点以降は情報としても知識としても価値を失ってしまうものがある。

 

3 誤解される「確率」

客観的確率と主観的確率

 サイコロと天気予報・選挙

事前確率は条件の変化により事後確率に変化する

 

第4章 情報を計る

シャノンの情報理論は確率をベースにしたもので、情報の意味、内容、価値とは無縁。

感情的な要素を持ち込むと、工学的な扱いが難しくなるから。

 

6

共有を阻む要因は背景知識(文化・社会・教育・経験・知識)の存在

 信号、知覚、意味、情感

「かねおくれたのむ」の例

 

8 ゆとりあるコミュニケーション

頑健性(robustness)と効率性

 冗長性は効率性が悪いが、頑健性は高い。

 効率性が高いもの(無駄がないもの)は、窮屈。無駄があることにより頑丈になる。

 

あとがき

 コミュニケーション論が情報理論のように理論的展開を華々しく迎えなかった理由

 シャノンが情報を定量化したようなことが、コミュニケーション論では困難であるため。