オセロー  ウィリアム・シェイクスピア 原作  小田島雄志 文

2016 年 9 月初版第 1 刷発行


シェイクスピア 39 歳頃の作品(1603~4 年頃)。
 「お気をつけなさい、将軍、嫉妬というやつに。こいつは緑色の目をした怪物で、人の心を餌食とし、それをもてあそぶのです」この名文句はオセローが出典だったのか。
それにしても、イアーゴーがオセロに、妻デズデモーナがキャシオーと不倫関係にあるとの讒言を吹き込み、嫉妬に狂っていくオセローの姿こそ、人間の弱い一面を抉り出している。いかに讒言であろうとも、人の嫉妬につけこみ、正常な判断を狂わしていく、世にいる悪人どもの本性を鋭く見破っていかないと、自分までも傷つけられかねない。そんな処世訓を読み取ることができる。

 嫉妬に狂ったオセローは周りの忠言も妻の言葉も一切合切信じることができず、遂に無実の妻の首を絞めて殺してしまう。その直後にイアーゴ―にたぶらかされていたことを知り、絶望の淵に立たされる。後悔先に立たず、とはこのこと。そして最後には自分の首に短刀を突き付けて自害する。

 さて、この出来事が一昼夜半の間に起きたとの解説を読んで、え?そうだっけ?と思いつつ、急テンポでここまで一気に話が進むことの不自然さに気づかずに読ませてしまうシェークスピアのペン裁きはさすがですよね。解説によれば、デズデモーナとキャシオーとの不倫に苛まれるのには、それなりの時間の経過が必要なはずで、そこに矛盾があるが、それすら感じさせないのがシェイクスピアのペンの魔法だとありました。