2022年11月25日初版発行
表紙「→全体像が見える『超』入門 →大人が教養を楽しめる 植物、動物、鉱物等多くの天然物に含まれる毒成分を明らかにし、毒物がどのような作用によって人の健康を害し、命を縮めるか、また、それが薬として利用されることはあるのかについても解説。さらに、漢方、医薬品、未来の医薬品候補について解説し、考察していく。」
表紙裏「人の命を奪うものと救うもの 『毒』は人類の歴史の中で無数の人の命を奪ってきました。しかし一方で、古くは毒矢で狩猟に使われたり、今では農業で欠かせないものともなっています。『薬』はこちらも人類の歴史の中で無数の人の病気や怪我を治療してきました。しかし、使われ方を間違えたり大量に摂取したりすると、一転して人の健康を奪うものとなります。本書では、この一見相反する「毒と薬」がどのような関係にあるのかに注目しながら、毒と薬の科学を解説していきます。」
裏表紙裏「A Message from The Author 毒は少量で人の命を奪う危険で恐ろしい物です。反対に薬は少量で人の命を助け、苦しみから救ってくれる頼もしい物です。しかし、多くの毒は適量を用いれば薬にもなり、また、多くの薬は多量に服用すると命をも脅かす危険物ともなります。毒は毒草、毒キノコ、毒魚に見るように自然界にたくさん存在します。それだけでなく、殺虫剤、殺菌剤などのように私たちの家庭にも、時には食卓の上にすら潜んでいて食中毒の原因になったりします。本書ではこのような毒と薬の相違、化学的な類似性などを楽しくわかりやすく解説してみました。本書を読んで、ぜひ、『毒と薬のエキスパート』になってください。」
第1章 毒と薬はどう違うのか?
1⁻1 病気・怪我との戦いから生まれた「薬」
1⁻2 なぜ、人類は「毒」を求めたのか?
1⁻3 毒と薬は“匙加減”で決まる
1⁻4 毒と薬の強さの目安は?
・毒のランキング表No1はボツリヌストキシン、No2は破傷風トキシン。No3のリシンより3000、200倍も強い(VXは7位、ダイオキシンは8位、サリンは13位。ちなみにフグのテトロドトキシンは6位、トリカブトのアコニチンは11位。コブラ毒は14位、ヒ素は17位、ニコチン18位、青酸カリウム19位)
・薬の半数の検体が治癒した場合の摂取量ED50と半数致死量LD50
LD50は体重1kg当たりの量で表されるので体重100kgの人はLD50の100倍して考える必要がある。
第2章 毒か薬か、それが問題だ!
2⁻1 毒が薬にもなる「毒の副作用」? 睡眠導入剤として発売されたサリドマイドはアザラシ症候群を発症させたが、後に抗がん作用があることが分かる
2⁻2 キノホルムにも「毒の副作用」? スモン病の原因だったキノホルムはアルツハイマーの特効薬としての効果があることが明らかになる
2-3 薬害とはどのような害なのか? C型肝炎、薬害エイズ、ヤコブ病(狂牛病)
2-4 不老不死の薬を追い求めて
2-5 原料は何でもよい、効きさえすればOK 精力剤
2-6 秘伝の秘薬が欲しかった?
第3章 毒は如何にして人を殺すのか?
3-2 なぜ、毒物で人は死ぬのか(1) 青酸カリの「呼吸毒」
3-3 なぜ、毒物で人は死ぬのか(2) フグの「神経毒」
3-4 なぜ、毒物で人は死ぬのか(3) キノコの「神経毒」
3-5 なぜ、毒物で人は死ぬのか(4) サリンの「神経毒」
3-6 なぜ、毒物で人は死ぬのか(5) 重金属の毒
3-7 なぜ、毒物で人は死ぬのか(6) 元素がもつ「放射線という毒物」
第4章 植物・菌類のもつ毒性と薬性
4⁻1 人が生きて来られたのは毒物のおかげ? 毒の文化圏
4-2 草本類の毒植物たち トリカブト、ヒガンバナ、スズラン
4-3 草本類の毒植物たち トウゴマ、キョウウチクトウ、シキミ
4-4 毒キノコかどうかの判別はプロでもむずかしい カエンタケ、ドクツルタケ、ニガクリタケ
4-5 猛毒トップランキングの細菌類 ボツリヌス菌、破傷風菌
第5章 動物のもつ毒性と薬性
5-1 なんと、哺乳類・鳥類にも毒をもつものが? カモノハシ(蹴爪)、トガリネズミ(唾液)、スローロリス(毒前駆体と唾液が混ざると毒になる)、モズの中にも毒を持つものが。
5-2 爬虫類と「毒のエキスパート」クレオパトラ コブラか、クサリヘビか
5-3 両生類の毒をなめてはいけない! ヒキガエルvsヤドクガエル
5-4 魚介類は猛毒のツワモノでいっぱい フグ、ヒョウモンダコ、ハブ貝
5-5 昆虫の毒、体は小さくても侮るべからず! ハチ、サソリ、毒蛾、セアカゴケグモ
第6章 化学物質のもつ毒性と薬性
6-1 知られていなかった重金属の毒 水銀、カドミウム、鉛
6-3 1500億人を殺せる毒物とは? 青酸化合物
6-4 農薬は人類社会へもダイレクトに影響する DDT BHC
6-5 なぜ、気体の毒が使われるのか? 化学兵器の毒
水銀の中に金を入れると、金は溶けて泥状の金アマルガムという合金になる。大仏はこれを塗り、内部から加熱し水銀を蒸発させて除くと表面に金だけが残り金メッキされる。このメッキの為に水銀50トンを使ったと言われる。蒸発した水銀蒸気は奈良盆地に立ち込め、地下水が汚染され、平城京は水銀まみれになり、僅か80年後に長岡京に遷都したのは水銀公害が理由だとする説もある。
第7章 麻薬・覚せい剤の毒性とはどのようなものか
7-1 薬物は脳の神経細胞にどう影響するのか? 耐性と離脱症状(禁断症状)
7-2 麻薬の毒性とは? 幸福感と破滅
7-3 覚せい剤の毒性とは? 錯覚
覚せい剤の開発者は長井長義。ゼンソクに発効があるエフェドリンを化学的に合成しようとした途中で合成されたのがメタンフェタミン(覚せい剤)だった。アンフェタミンの合成に成功したのはルーマニアの化学者。
第8章 天然物から生まれた医薬品
8-1 漢方薬は天然の物を利用している
8-2 抗生物質が病気を治す
8-3 欠乏しても、過剰でもいけない必須微量元素 コエンザイム(助酵素)
8-4 ビタミンとホルモンは医薬品? 本質的な医薬品
ビタミンとホルモンは本質的に同じものだが、自分で作ることが出来る物をホルモン、出来ない物をビタミンという。
8-5 媚薬の成分を調べてみる プラセボ効果
8-6 美容薬にボツリヌス菌? シワ取り剤ボトックス、脳卒中患者のリハビリ薬
第9章 化学合成薬は人為的に作られた医薬品
9-2 バイ菌をやっつける合成抗菌薬 抗菌剤 サルバルサン(梅毒)
9-3 抗がん剤が効くしくみ 分裂を阻害
9-4 金属を含む合成医薬品 金、銀、白金、水銀
9-6 RNAを使った新型コロナワクチン 最新免疫法
第10章 ヒトを救う「未来の医薬品」の候補たち
10-1 薬剤の概念を変える「分子膜抗がん剤」
10-2 分子膜でがんワクチンができる!
10-3 ターゲットだけを攻撃する薬剤 分子膜DDS
10-4 DNAを役立てた医薬品を作ろう テーラーメイド、ゲノム編集
10-5 難病治療の切り札iPS細胞
10-6 人は永久に生きられるか?
チャングムの誓いを視聴して、毒と薬に関心を持って斜め読みしてみた。細部にまで目を通した訳でもないが、豆知識としては大変為になる。