中原の虹3 浅田次郎

2010年10月15日第1刷発行

 

裏表紙「大いなる母・西太后を喪い、清王朝の混迷は極まる。国内の革命勢力の蜂起と諸外国の圧力に対処するため、一度は追放された袁世凱が北京に呼び戻される。一方、満州を支配する張作霖は有能なブレーン・王永江を得て、名実ともに『東北王』となる。幼き皇帝溥儀に襲い掛かる革命の嵐の中、ついに清朝は滅亡する。」

 

第5章 風雪きわみなく

 西太后の死去により失脚した袁世凱は天津に逃げ隠退し3年が経過した。そこに占い師が現れ、王者になるとかつて告げたことを再び宣託する。袁世凱が龍玉のありかを聞くと張作霖の手中に委ねられていると聞く。醇親王は徐世昌の進言を入れ袁世凱を復活させる。東三省は王永江から挙兵の建言を受けた張作霖が掌握する。バックハウス教授がロンドンで出版した「西太后治下の中国」を著しベストセラーとなる。徐世昌から、西太后を希代の鬼女としたこの本の発行に手を貸したアメリカ人記者が詰め寄られると、西太后の本心を明かした。憎しみがなければ革命は成功しない、その悪魔を放伐する英雄が出現する舞台を誂えた、おのれを不倶戴天の鬼女とすることによって、という本心を。

 蒋介石が日本の柳川文秀の家の前で雨に濡れながら文秀の帰りを待ち、文秀と出会う。清朝打倒ではなく救国済民を目指すために日本の振武学校で学び今は隊付勤務を経験しているという。文秀が自分を訪ねてきた理由を聞くと、蒋介石は王逸から会えと言われたと。

 日本人記者の岡と吉永中尉は奉天のホテルで出会い、吉永は書き溜めていた北京での出来事を岡に託す。吉永から今後のキーマンと教えられた袁金鎧に会うために岡は奉天総督府に臨む。帰りがけに張作霖が袁金鎧に面会に来たため岡は鉢合わせする。

 摂政王から3年ぶりに北京に呼び戻された袁世凱は、徐世昌から2人きりになったところで東北の政情を聞き出すと、龍玉のありかが分かった、張作霖が持っていると伝え、天命を抱く者が自分であると告げる。すると徐は袁世凱に対して、怒って天子の器ではない、天が定めた袁世凱の役割は大清帝国を滅すことだと諭す。

 溥儀の下に臣下一同が揃った場で袁世凱が自らを内閣の総理として全権を与えるよう衷心よりお願い奉るというと、西太后の声を聞いた溥儀がその通り宣託する。

第6章 落城

 清王朝から中華民国への移譲の際、袁世凱への殺害テロ未遂事件が起こる。胡六が極上の阿片を求めてたどり着いたのは溥儁の店であった。張作霖は東北の革命派幹部、中華民国政府の5人の行政官を皆殺しにする。春雷の愛馬の竜騎馬が死に、その妻銀花は子を宿す。頑固一徹の趙爾巽は東三省総督から奉天都督に称号を変えて任命を受ける。張の振舞いの真意を尋ねようとした趙爾巽の前に現れたのは張作霖の王永江だが、張と考えていたことと趙爾巽の考えていたこと(断じて私利に非ず、単に東三省の平安のみ)が一致していることを知り、王永江がなぜ張が趙爾巽を殺さなかったのか謎が解ける。直後に張作霖以下が大勢乗り込むが、趙爾巽のことを認めて皆立ち去る。一方で袁世凱孫文に代わりに臨時中華民国大総統になる手はずが進んでいる。